12月に入りプロ野球界の話題は、新外国人選手の獲得や契約更改が目立っている。どのチームも2020年シーズン以降へ向けて、ウイークポイントを補いながら戦力を整えている段階だ。
先週まで公開した週刊野球太郎の連載企画「チームは回っているか!? 2019年 12球団編成採点!」では、12球団のここ数年の編成を「日本人選手獲得」「外国人選手獲得」「育成状況」のカテゴリーごとに採点してきた。
今回は“まとめ”として、この編成採点を振り返りながら、ドラフトから今オフの補強と照らし合わせ2020年シーズン以降を占ってみたい。今回はパ・リーグの6球団だ。
パ・リーグ3連覇を目指す西武は、採点で満点をつけた外国人獲得の要因であるニールが残留した。新たに先発左腕候補のノリン、内外野で複数のポジションを守ることのできるスパンジェンバーグを獲得。どのような起用となるかは不明だが、ニールのように戦力となることが連覇への最低条件となる。
日本人選手ではMLBへの移籍を目指す秋山翔吾の退団がほぼ確実となっている。その穴埋めとしてFA宣言した福田秀平(ソフトバンク→ロッテ)の獲得を目指したが、叶わなかった。辻発彦監督は金子侑司を中堅で起用し、左翼をスパンジェンバーグや若手の鈴木将平、ベテランの栗山巧と争うことになりそう。かねてより、西武は大きな流出があっても若手が台頭し、危機を救ってきた。鈴木の飛躍で、今回も良い循環が生まれることに期待したい。
ソフトバンクは2019年シーズン、外野手に多くの故障者が出て苦しんだ。そういった不測の事態に備え、ドラフト1位で高卒社会人出身の佐藤直樹(JR西日本)を獲得。また、ヤクルトを自由契約となったバレンティンの調査にも乗り出している。
ほかにも外国人選手の補強に動いている報道があるなど、昨年とは違い補強に力を入れている。一方、台湾で行われているアジア・ウインターリーグ・ベースボールでは、育成契約の砂川リチャードが好調をキープ。育成も順調に進んでおり、2020年シーズン以降も数年は優勝争いに絡んでくるだろう。
楽天は2018年シーズンオフ続いて2年連続で大きく動いた。鈴木大地(前ロッテ)と牧田和久(前パドレス)を獲得したのである。石井一久GMになってから2年連続で国内FA権を行使した大物の補強に成功したのは心強い。これらの補強で戦力は整ってきた。継続して強さを維持するために若手選手の育成ができるかが、今後のカギとなる。
ロッテはこのオフの主役となった。ドラフトでは佐々木朗希(大船渡高)を獲得し、美馬学(前楽天)と福田の2人を迎え入れたのである。また、外国人選手としては2018年シーズンまで広島でプレーしていたジャクソンを補強。主力となりうる日本人、実績のある外国人、そして育成しがいのある金の卵を次々と獲得したのである。
平沢大河、安田尚憲、藤原恭大といった野手の希望の星が、目を出しつつある投手陣のように育てば、今後、上位争いの常連となってもおかしくない。
日本ハムは例年通り国内FA選手には目を向けず、外国人選手の獲得だけにとどまっている。現時点では、中継ぎ候補のバーヘイゲンと2019年シーズンに巨人でプレーしたビヤヌエバの2人を補強した。今後トレードなどで補強を行う可能性はあるが、大型補強という形にはならないだろう。
一方、ドラフト会議では河野竜生(JFE西日本)と立野和明(東海理化)と即戦力候補となる社会人投手を指名。彼らが期待通り戦力となれば、上位に食い込む可能性は十分にある。
今後数年を見ると、お家芸でもある高卒選手の育成が追いつかなくなると厳しくなりどうだ。清宮幸太郎や吉田輝星といったドラフト1位組や万波中正といったホープが、2020年シーズンにどんな成績を残すか。その結果によっては、これまでのチーム作り、運営に方針の転換を迫られるかもしれない。
オリックスは、なんと言ってもアダム・ジョーンズの獲得だろう。MLB通算282本塁打の打力だけでなく、来年は35歳となるも、ゴールドグラブ賞4回の守備力はまだまだ健在。オリンピックとの兼ね合いもあるだろうが、このレベルのオールラウンドプレーヤーを獲得できるのは珍しい。今季はリーグ最少得点だったオリックスには、非常に大きな補強となった。また、右打ちの一塁手・ロドリゲスとの契約も合意間近という。
大物外国人を獲得した一方で、日本人選手も、投手では山岡泰輔、山本由伸や榊原翼といった若手投手の育成が進んでおり、野手では吉田正尚という軸がしっかりしている。
その主力選手たちを支える選手を、いかに育てていくかが2020年シーズンのひとつの目的となりそうだ。そのために育成ドラフトでは8名を指名しており、2021年シーズンからは3軍を創設するという。
今年もアダム・ジョーンズを獲得し、どちらかというと外部からの補強が多かったオリックスだが、チーム強化の核は、育成の方向に舵を切る。その分水嶺となる2020年シーズンの戦いは注目となる。
文=勝田聡(かつた・さとし)