メキシコのモンテレイで開催された「第1回WBSC U-23ワールドカップ」は、日本時間の11月7日に決勝が行われ、日本がオーストラリアを10対3で下し、初代の世界王者となった。
終わってみれば、トータルで9試合を戦い8勝1敗だった今大会。この数字だけ見ると、日本がこの大会で輝きまくったようなイメージを与えるかもしれないが、実際は決して楽なVロードではなかった。
オープニングラウンド(1次ラウンド)は5戦5勝、しかもいずれもワンサイドに近い内容で突破した日本。投打が噛み合い、相手を圧倒する試合ばかりで、たしかにここまでは順風満帆だった。
ところが、次のステップとなるスーパーラウンド(2次ラウンド)の3試合は、一転、厳しい戦いを強いられた。
スーパーラウンド初戦の韓国戦は、両チームとも攻めあぐねる膠着した状態から、5回表にジョン・ヒョンに先制ソロを浴びてしまう。そこから、7回裏に真砂勇介(ソフトバンク)の同点ソロで追いつき、無死一、二塁から試合を始めるタイブレーク方式の延長戦へ。10回表の韓国の攻撃をしのいで、その裏、相手のエラーでサヨナラ勝ち。2対1の辛勝だった。
続くパナマ戦は、2回に山下幸輝(DeNA)のソロアーチなどで2点を先制するも、その後はパナマの先発・ベラスケス、8回途中から登板したゲレーロの粘りのピッチングの前に日本打線は沈黙。逆に、パナマには3、5、8回と小刻みに1点ずつを挙げられてしまい、2対3で逆転負け。今大会の初黒星を喫した。
3戦目のメキシコ戦は、5回裏にエラー絡みで日本が2点を先制するも、6回にディアズの同点2ランで同点に。しかし9回裏、無死一、二塁から、三好匠(楽天)の投ゴロをメキシコが悪送球してくれて、日本にサヨナラ勝利が転がり込んできた。
ただ、スコアは3対2の勝利でも、チャンスであと一本が出ず、3点ともメキシコの守乱によるもの。エラーがなければ、勝敗はどうなっていたかわからない苦しいゲームだった。
決勝進出がかかったスーパーラウンドは、プレッシャーも、各チームの真剣度も格段に違う。それをあらためて思い知らされる3試合となった。
オーストラリアと対戦した決勝も、最終的には10対3と点差は開いたが、3回表の1死二、三塁から、ホワイトフィールドのライト前2点タイムリーで先制され、4回表にはシェパードのソロで追加点を奪われる。一時は0対3と完全にオーストラリアペースの展開。
しかし、日本にツキがあったのは、連日の悪天候もあってグラウンドが荒れ気味で、相手方にミスが出たこと。4回裏に内野陣の拙守に乗じて4点を奪い逆転すると、6回には真砂のソロ、廣岡大志(ヤクルト)の3ランなどで5点追加。ここで勝負は決した。
なお、大会MVPには、4本塁打の真砂が選ばれた。
侍ジャパンのトップチームは、11月10日から13日の4日間で、メキシコ代表、オランダ代表と強化試合を行う。そしてオフを挟んで、2017年3月には、いよいよ第4回WBCが開幕となる(1次ラウンドは、日本と韓国では3月7日から、アメリカとメキシコでは3月9日から)。大一番に向けて、今回のU-23代表の世界制覇は、この上ない景気づけになったのではないだろうか。若手は苦しみながらも結果を出した。次はトップチームの番だ!
文=藤山剣(ふじやま・けん)