昨年の秋季東京都大会の決勝に続いて、春季東京都大会の決勝でも早稲田実と日大三が再び激突。加熱する「清宮フィーバー」と神宮第二球場のキャパシティ(収容人数5600人)考慮して、なんと神宮球場のナイターで行われた。
4月27日、神宮球場を埋めた2万人の観客が見守った試合は、両校とも一歩も引かず、逆転に次ぐ逆転。壮絶な打撃戦となり17対17で延長戦に突入。12回裏、早稲田実の1番・野田優人(2年)がサヨナラヒットを放ち、18対17で決着。4時間を超える死闘の末、昨年秋と同様に早稲田実が東京の頂点に立った。
殊勲のヒーローこそ後輩に譲ったものの、清宮幸太郎(3年)はこの試合で2本の本塁打を放ち、高校通算本塁打は84本に。9回裏には同点スリーランを放つなど、怪物ぶりを遺憾なく発揮した。
昨年秋の対決では、清宮から5三振を奪った日大三の左腕・櫻井周斗(3年)はこの試合では3番・右翼で出場し、登板なし。両者の直接対決は、夏の西東京大会にお預けとなった。
西東京大会では早稲田実と日大三が優勝候補の双璧。両校が対戦する可能性は高い。櫻井を温存した日大三が借りを返すか、それとも「怪物伝説・最後の夏」に挑む清宮・早稲田実が3度、勝利をものにするか。
ほかに先駆けて、地区大会が始まった九州ブロック。九州大会は神村学園(鹿児島)の優勝で幕を閉じた。
センバツ出場校で九州大会の準決勝まで残ったのは、ベスト4の秀岳館(熊本)のみ。
揃ってセンバツベスト8に顔を並べた福岡勢の福大大濠と東海大福岡は、福大大濠が準々決勝で鹿児島実(鹿児島)に敗退。3季連続の九州大会制覇を逃した。東海大福岡は初戦となった2回戦で優勝校の神村学園にコールド負け。力を発揮できなかった。
しかし、東海大福岡はセンバツで早稲田実に打ち勝ち、大阪桐蔭戦では敗れたものの2対4と善戦。自力はある。福大大濠はセンバツの滋賀学園戦で延長15回を1失点で投げきったプロ注目の好投手・三浦銀二が健在。敗れた準々決勝での登板しなかった。
強豪がひしめく福岡。両校を軸とした夏の福岡大会は激戦が予想される。
青森では、春季青森県大会につながる八戸地区予選の決勝で八戸工大一と八戸学院光星が激突。
八戸工大一のドラフト候補右腕・古屋敷匠真(3年生)は、10対7と3点リードの9回に登板。1点を失いながらも、最速147キロのストレートで押し、2奪三振。ピンチを切り抜け、試合を締めた。
夏は八戸学院光星、青森山田の甲子園常連校の壁を崩し、「夏の甲子園で活躍し、プロ入り」という古屋敷の願いは叶えられるか。
ベスト4と躍進したセンバツを最後に、23年間チームを率いた永田裕治監督が勇退した報徳学園(兵庫)。
大角健二新監督(前部長)による「ニュー報徳」での戦いが幕を開けた。春季兵庫県大会では、西脇工との初戦を7対1で快勝。上々な滑り出しを見せている。
新体制になっても強さは変わらず、と言ったところか。伝統の「粘り強い野球」「勝負強さ」にどんなカラーが加わるのか注目したい。遊撃の小園海斗(2年)、中堅の永山裕真(3年)ら逸材が揃っているだけに楽しみだ。
夏の福島大会11連覇を目指している聖光学院。
カギを握るのは新エースの平野サビィ(3年生)。利き手の右手の握力が72キロ、左手が68キロ、背筋が250キロという怪力を誇り、「筋肉モンスター」の異名を取っている。
筋トレの効果により、冬の間で球速が17キロもアップ。まだまだ伸びしろは十分。夏までにどれだけ成長するか楽しみな投手だ。
センバツの決勝で相まみえた大阪桐蔭と履正社。ともに春季大阪府大会は初戦コールド勝ちと、順調な滑り出しを見せた。
しかし、大阪桐蔭はセンバツで優勝しても手綱を緩めず、まずは「春の大阪で勝つこと」を目下の目標にしている。昨年秋の大阪府大会で敗れたことが引っかかっているからだ。
地に足をつけ、じっくりと歩みを進める王者に甲子園連覇の死角なし?
ここまでは注目校、注目選手の状態を見てきたが、最後に試合の制度についても触れたい。かねてから議論されていた「タイブレーク制」が早ければ来年のセンバツから導入される可能性が浮上した。
高校野球でのタイブレーク制は延長10回から1死満塁で行われる。これまで甲子園大会では反対、もしくは慎重を求める声も多く実現してこなかった。
しかし、先のセンバツで2試合連続の引き分け再試合が起こったことから、あらためて選手の健康管理がクローズアップされ、導入に向けた動きが加速しているようだ。
「清宮フィーバー」から各地区大会の模様、気になる制度の問題まで、様々な話題が踊る春の高校野球。この『夏まで待てない! 春の高校野球ニュース!!』では毎週、新鮮なトピックスをお届けしていくのでお楽しみに!
文=森田真悟(もりた・しんご)