新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れているが、今シーズンのカギを握るのはやはり新助っ人だろう。今季注目の新助っ人と過去の助っ人の共通点を探ってみた。
虎の4番候補として獲得された阪神・ボーア。オープン戦では8試合で打率.200、0本塁打とやや寂しい成績に終わってしまったが、来日以来、ある助っ人との比較が盛んにされている。
2010年に阪神で47本塁打をかっ飛ばしたブラゼルだ。打撃始動時のスタンスこそ異なるものの、上体やリストの強さで広角に打球を飛ばす姿は近いものがある。
しかし、メジャー実績ではボーアの方が上だ。ボーアがこれまでメジャーで559試合に出場して92本塁打を記録しているのに対し、ブラゼルの来日時の実績は29試合、1本塁打。3Aで圧倒的な成績を残していたが、無名といえば無名の存在だった。
昨季のデータ上、ボーアに期待したくなる点もある。それはプルヒッターではないということだ。ブラゼルは来日1年目の西武時代は打率.234(27本塁打)の低打率だったが、実はこれは引っ張り癖が抜けきらなかったからだ。2年目に阪神に移ってからは、持病の左膝痛もあって軽打が増えた。それが功を奏し、2割台後半の打率をキープした。
これまでボーアは意外にも広角に本塁打を放っており、ヒットも同様。左投手に滅法弱いが面白い存在であることに間違いはない。「ブラゼルの再来」を期待したい。
オープン戦12試合で打率.343、4本塁打を記録し、新助っ人野手の中では頭一つ抜けた活躍を見せたのは、DeNAのオースティンだ。
昨季はメジャー3球団でプレーし、89試合、179打席で打率.188ながら9本塁打をかっ飛ばしている。
しかし、ネット上では獲得時からある不安が囁かれていた。「ロマックの再来」ではないか…と。おそらくDeNAファンを除けば、忘却の彼方だろう。ロマックとは2016年にDeNAに入団し、30試合で打率.113、0本塁打という目も当てられない成績を残して退団した、いわゆる“トラウマ”の助っ人なのだ。
確かにどちらかといえば一発狙いの打撃スタイルやバットの揺らし方など、類似点は多い。しかし、オープン戦15試合で打率.156、0本塁打のロマックとの差をオースティンは確かに見せつけている。
DeNAファンは胸を撫で下ろしているところだろう。ちなみにロマックは2017年から韓国・SKに在籍し、昨季は29本塁打を放っている。ちなみついでにもう一つ。阪神に新加入したサンズは昨季、韓国リーグで28本塁打。ロマックの方が上だった。
オースティンはカルトヒーローで終わらないはず…。
今季の注目選手の一人はやはりエスコバー(ヤクルト)だろう。メジャーでゴールドグラブ賞を受賞した守備職人のスゴ技は、すでにオープン戦でも披露されており、ヤクルトの内野守備は注目ポイントだ。
しかし、打撃は“前評判”の通り、11試合で打率.129、0本塁打に沈んでいる。それでもまだ諦めてはならない。外国人のショートストップは日本で打撃開眼することが多いからだ。
好例は広島、阪神で活躍したシーツだろう。広島時代は遊撃を守っていたシーツだが、実はエスコバーと同じく、内野守備の強化要因としての補強だった。
メジャーでの通年の出場はなく、来日前年の3A成績は98試合で打率.294、14本塁打。それが日本では1年目から136試合で打率.313、25本塁打に化けたのだ。
エスコバーは、昨季は打撃面が評価されず3Aで1年間プレーしたが、96試合で打率.286、10本塁打をマークしている。年代にやや隔たりがあるものの、シーツ級の成績を残していたことは紛れもない事実である。
その他、来日3年目で突如32本塁打を放った広島・ディアスなども日本で爪痕を残したショートだ。エスコバーにも逆転大化けの期待をかけておきたい。
(写真はロッテ時代のブラゼル)
文=落合初春(おちあい・もとはる)