現時点での清宮のライバル候補筆頭は安田となるだろう。履正社高時代には「東の清宮」に対し「西の安田」と注目され、高校通算65本塁打を放った。ドラフト1位でロッテに入団してからも、変わらず注目を集めている。今季のロッテは、井口資仁監督の方針で、春季キャンプ序盤では1軍、2軍の振り分けをしていない。そのなかで、安田は井口監督の目前で大きなアピールに成功。1軍、2軍の振り分けられたキャンプ中盤以降も1軍帯同を勝ち取った。
安田の本職は三塁だが、一塁の守備練習も行うなど起用法の幅も広がりつつある。一塁を専門とするベテランの福浦和也が故障で2軍降格したこともあり、開幕1軍だけでなくスタメン争いにも加わることになりそうだ。
ライバル関係という点では、例えばドラフト時に「ビッグ3」などと注目を浴びていた選手たちが、プロに入ってからもライバルであり続けるケースはそう多くない。特に野手同士となると極めて稀といえる。
過去を振り返ってみると、2007年の「高校ビッグ3」、中田翔(日本ハム)、唐川侑己(ロッテ)、佐藤由規(ヤクルト、現由規)のなかで野手は中田だけ。2004年に注目されたダルビッシュ有(カブス)、涌井秀章(ロッテ)、佐藤剛士(元広島)は、全員が投手だった。
清原和博(元西武ほか)、松井秀喜(元ヤンキースほか)ら甲子園に名前を残したスラッガーは、高校時代からのライバルは不在といっていいだろう。清宮と安田という、高校時代にしのぎを削ったスラッガー同士がプロでも切磋琢磨することに期待したい。
投手では誰が清宮のライバルとなるか。早稲田実時代の対戦から考えると櫻井周斗(DeNA)だろう。2年秋(2016年)の東京都大会決勝。日大三高のマウンドに登った櫻井は清宮に対し、5打席連続三振の快投を演じている。延長戦の末、早稲田実に敗れたものの、櫻井の名前が一気に全国区へと知れ渡った試合だ。
櫻井のドラフト指名順位は5位。7球団競合した上での1位指名・清宮に大きく及ばない。しかし、プロに入れば横一線。この春季キャンプでは2軍スタートだったものの、ハンファ・イーグルス2軍(韓国)との練習試合では2試合で計2回に登板し、無失点と好投。伝家の宝刀・スライダーで三振を奪うなど、ラミレス監督に大きくアピールした。2人はリーグが違うため対戦する機会は多くないものの、プロの世界でも清宮から三振を奪いたい。
そのほかには中村奨成(広島)、村上宗隆(ヤクルト)、吉住晴斗選手(ソフトバンク)といったドラフト1位の選手たちもライバル候補となるだろう。高卒プロ入りということもあり、1年目から1軍の舞台でライバル対決を繰り広げるということは、難しいかもしれない。だが、これから先の未来に、彼らがプロで戦い続けるという、数十年にわたる物語を紡いでほしい。
文=勝田聡(かつた・さとし)