11月15日、東北楽天ゴールデンイーグルスは、秋季キャンプで入団テストを行っていた、前広島東洋カープの栗原健太内野手の獲得を発表した。
かつて4年連続20本塁打を放ち、日本代表まで上り詰めた選手の復活は、ファンならずとも興味深い。山形県出身の栗原は、地元・東北で再び輝くことができるのだろうか?
栗原は1999年のドラフト会議で広島から3位で指名され入団。入団4年目から1軍に定着。2008年には打率.332、23本塁打、103打点の好成績を残して不動の4番打者、チームの顔として君臨。
ケガで離脱した村田修一(当時横浜)に代わる代替選手として、2009年のWBCにも出場し、世界一に貢献するなどチーム外でも大活躍。当時暗黒時代の真っ只中だった広島において、栗原という存在がファンにとって唯一の光であった。
そんな栗原の特徴はやはり、その日本人離れした体格が物語る身体能力、パワーだろう。入団当時よりベンチプレス120s、背筋280sを計測。高卒ルーキーとしては考えられない数値を計測し周囲を驚かせた。
実は栗原の魅力は、パワーだけではない。その真骨頂は、長距離ヒッターながら三振が極端に少ない確実性にある。バットのヘッドを内から外へ投げ出す高等技術「インサイドアウト打法」で、反対方向へ力強い打球を飛ばす器用さも兼ね備えている。
あの長嶋茂雄氏をもってして、「将来の日本を背負って立つ打者になる」と言わしめたほど、高い素質と実力を持っていた。
ところがそんな栗原も、持ち味である押し込む打法の影響で右ヒジを負傷。以降は腰、手首など、いたるところを負傷して満足にプレーできなくなってしまう。昨年オフには、再起をかけて3度目のヒジの手術を行うも結果として、一度も1軍に呼ばれることはなかった。
致命的貧打に喘ぐ1軍にも呼ばれなかったのは、自身の打撃不振に尽きた。
ファームでは30試合に出場して打率.132、1本塁打、2打点。過去の実績は抜群なれど、この数字では、到底1軍の戦力に成り難い。ど真ん中の球に大きく腰を引いたりと、技術面よりも精神的な部分に原因があるのでは、と囁かれた時もあるほど、過去の力強さは鳴りを潜めてしまった。
そんな流れの中、栗原は楽天へ移籍することとなった。現役の山形県出身のプロ野球選手は6選手。栗原はその中でも代表格だ。
それ故に楽天ファンは栗原を大いに歓迎している。そして、復活を望んでいるだろう。楽天ファンだけでなく、広島ファンもまた復活を期待している。来期、東北の大地で躍動する栗原の姿があることを信じたい。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)