熱戦が続いた今年の夏の甲子園も、本日の決勝戦をもって幕が下りる。さて、決勝戦の後、文字通り「下りる」ものがあるのだが、それは何か? 正解は甲子園球場のスコアボードに掲げられた日本高等学校野球連盟旗だ。
なかなか直接目にする機会がないこの連盟旗。デザインは赤いホームベースの中央に白球のような丸いスペースがあり、その中に「F」の文字があしらわれている。旗そのものの生地は紫地か白地の2タイプだ。なぜ「F」なのか? なぜホームベースは赤いのか? 紫地と白地の2タイプある理由は? ひとつずつ紐解いていこう。
連盟旗に記された「F」の文字。ひとつ目の意味は「フェデレーション」(Federation:連盟)の「F」だ。そして他にも3つの頭文字が込められている。それは「ファイト」(Fight :闘志)、「フレンドシップ」(Friendship:友情)、「フェアプレイ」(Fair play:正々堂々) の「F」。まさに高校野球から連想する言葉たちだ。
この連盟旗が誕生したのは1949(昭和24)年の春の選抜大会がキッカケ。それまで、甲子園球場のスコアボードには、日本国旗と主催者である毎日新聞社旗(春)、朝日新聞社旗(夏)だけだった。
これに異を唱えたのがGHQ。選抜大会を視察した際、「選抜は高野連と毎日新聞社の共同主催であるはず。それなのに、毎日新聞社の旗だけがあるのはおかしい」と訴えてきたのだ。
1947年春に復活した選抜大会だが、もともとGHQは、春と夏、年に2度も全国大会あることに反対だった。そしてもうひとつ反対する理由が、「本来、公正な報道をしなければならない新聞社が大会を主催するのはおかしい」というもの。そこで、高野連と新聞社による“共同主催”を示すべく、連盟旗が必要とされたのだ。
こうして制作されたのが、紫の生地に「F」マークを施したもの。紫は「崇高」を、ホームベースの赤は「若人の情熱」を、白い丸は「清純」を示す色として採用された。ただ、このままの色では夏の大会には不向きと、白い生地タイプも制作。こうして、紫地と白地の2タイプが併用されることとなったのだ。
このような背景をもって生まれた連盟旗は、甲子園大会中、スコアボードの上に高く高く掲げられ、球児たちの戦いを見守ってくれている。
ところが過去、さらにもっと高い場所で連盟旗がはためいたことがある。それは宇宙空間。2000年、日本人宇宙飛行士の若田光一さんが、高校野球の試合球とともに連盟旗を持参してスペースシャトルに乗り込んだのだ。元高校球児の若田さんだからこそ実現した、夢の企画だった。
さて、いよいよ決勝戦。優勝を目指す両校にはぜひとも、勝利とともに「ファイト」「フレンドシップ」「フェアプレイ」の精神も意識して、連盟旗にふさわしい戦いぶりを見せて欲しい。