珍プレーの宝庫、球団マスコット。彼らの軌跡を振り返れば、プロ野球の新たな一面も見えてくるはずだ。そこで、今年印象に残った10個の「マスコットニュース」を勝手に選定! 先週の上半期編に続き、下半期5つのニュースから「マスコットこの1年」を振り返ってみたい。
12月5日(土)、『プロ野球珍プレー好プレー大賞』が11年ぶりにゴールデンで大復活!
(正式なタイトルは『中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞〜安心してください!33年分ありますよSP〜』)
我らがマスコット界からはハリーホーク(ソフトバンク)、つば九郎(ヤクルト)、マーくん(ロッテ)、ジャビット(巨人)の4体のマスコットが出演を果たした。
なぜ、この4体かといえば、クライマックスシリーズファイナルステージに出場した4チームに敬意を表して、ということだろう。ただ残念ながら、今回の放送では“グラウンドレベル”中居正広氏を始め、他の出演陣との目立った絡みもなく、ただ立っているだけだった印象が強い。
ひょっとすると、つば九郎はいつもの傍若無人な(つまり、ゴールデンに相応しくない)フリップ芸を披露し、全カットされていた可能性はあるが……。
オフシーズンはマスコットにとっても絶好の営業シーズン。普段は絡みのない業界や著名人とコラボすることで、新たなファン層を拡大するチャンスでもある。たとえば、映画『トランスポーター』の宣伝担当として、阪神のトラッキーが各種イベントに出演し、話題を呼んでいる。
そんな中、今年で3回目を迎えた異色のコラボが存在する。L'Arc〜en〜Cielのドラムス・yukihiroとドアラ(中日)による「ドアラルクカレンダー」だ。
実はyukihiroは中日ファンであり、そしてドアラの大ファン。むしろ、ドアラきっかけで中日を応援するようになったという、生粋のドアラマニア。この「ドアラルクカレンダー」では、そんなyukihiroとドアラの仲睦まじい姿が、全ページフルカラーで堪能できるという。
既に販売期間が終了しているため入手困難なのが残念。だが、今後もぜひ、この夢あるコラボ企画を継続してもらい、ドアラファン、中日ファンを拡大してほしい。
6月27日(土)、静岡・草薙球場で行われた巨人戦で、つば九郎が「主催1500試合連続出場」という偉業を達成した(また、試合前にグラウンド整備車に軽くひかれた)。初出場は1994年4月9日の阪神戦(神宮)。昨年の20周年に続く、2年連続での偉業達成となった。
翌日の28日には「1500試合達成記念Tシャツ」をOfficial Net Shopで受注販売。その他、LINEスタンプや記念チケットの販売など、商売上手な一面はさすがのひと言だ。
野球ファンはもとより、マスコットファンであっても首をかしげた企画が、12月25日に名古屋観光ホテルで開催予定の「ドアラ&つば九郎 2015クリスマスディナーショー」だ。
料金はお一人様19,000円(クリスマスディナー、フリードリンク、サービス料、税金含む)となかなかの高額。これで本当に人が集まるのか!? と思いきや、発売即完売だったという。
これに味を占めたのか、2016年1月24日、今度はつば九郎のライフワークともいうべき、「つばさんぽ」の番外編として「つばさんぽPresents つば九郎・ドアラ2016ニューイヤーディナーショー」を実施することが決まった。料金は1人18,000円(コースディナー、フリードリンク、サービス料、税金含む)。こちらも、12月5日(土)に発売開始をするや、あっという間に完売してしまった。
まだ、どちらのディナーショーも実施していないため、その評判・反応次第ではあるが、今後はつば九郎&ドアラに限らず、マスコットによるショーはますます増えていくのかもしれない。
史上稀に見る「混セ」を制した東京ヤクルトスワローズ。セ・リーグのレギュラーシーズンが終わった翌日の10月8日、朝日新聞のウェブサイトにて「つば九郎、悲願のビールかけ チーム浮沈見続け22年目」なる特集記事が公開された。プロ野球の優勝を「マスコット目線」で切り取るなんてことは、前代未聞の出来事だ。
《14年もの間、優勝から離れたのは、つば九郎にとって初めてのことだ。特に首位を独走しながら優勝を逃した11年は悔しかった。当時の小川淳司監督(58)には、「一緒にビールかけしような」と言われていた。「暑くないか」「水飲めよ」と気遣ってくれた小川前監督のことを思い、優勝を決めた今月2日は、自宅に飾る小川前監督のユニホームを手に球場入りした。》 (朝日新聞記事より引用)
……これは、我らの知っているつば九郎じゃない! だが、こんなつば九郎も素敵だ。
そして、「つば九郎×ビールかけ」といえば、2009年刊行の『つば九郎のおなか』に、こんな「予言」があったことを当コラムで発見・紹介もした。
《きゅうだんの えらい ひとたちが、くりびつてんぎょう、いや、びっくりぎょ〜てん するくらい、うれて、つばくろうのおなか、だい2だん、『つばくろうとまなか〜びーるだいすきのおとこたち〜』を、そしてだい3だん『つばくろうのせなか〜2ほんのしっぽにふれないで〜』をだしたいな〜…》(『つば九郎のおなか』より)
ここに出てくる「まなか」とは、当時2軍コーチだった真中満監督のこと。6年後の今年、“びーるだいすきのおとこたち”はそろって悲願のビールかけを実現。つば九郎の「ビール腹」も、さらに磨きがかかったはずだ。
こうして振り返ると、下半期の話題はほぼ、つば九郎とドアラばかり。さすがはマスコット人気を作り上げてきた2体。面目躍如といったところか。もちろん、他のマスコットたちも「メディア受け」していないだけで、それぞれ本拠地での試合を中心に地道な活動でファン開拓に勤しんでいるのは間違いない。来季もマスコットたちの活躍を球場の内外問わず、注目していきたい。
文=オグマナオト(おぐま・なおと)
1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)