田中幸雄は日本ハムひとすじ22年の「ミスター・ファイターズ」。現役引退後は2軍打撃コーチ(再任含む)、1軍打撃コーチを経て、2015年から2軍監督に就任。
現役時代のキャリアと引退後の役割をみれば、田中が次期監督候補の筆頭に位置づけられる。ちなみに他球団を見回しても、名球会有資格者クラスの2軍監督は田中を含めて3人だけ。これは会社人事に例えるなら、“役員への昇格前に現場経験を積ませるために支店長ポストに着任した”といったところか。
金子誠は2014年の現役引退後、チーム統轄本部特命コーチを経て、2016年から1軍打撃コーチに就任。
金子もまたチーム生えぬきの重鎮の一人。何といっても選手のよき兄貴分であり、チームの精神的支柱でもある。金子の現役時代、負傷でチームを離脱した際にはほかの選手たちが浮き足立ち、チームのバランスが崩れかけたほどだ。
監督就任のタイミングはさておき、現在の経験が将来に生かされることは間違いない。
稲葉篤紀が2015年から就任したスポーツ・コミュニティ・オフィサー(SCO)とは「球団企業理念活動の責任者」で、野球競技の普及や社会貢献活動の推進、選手会とのパイプ役も務めるという球団初の役職だ。
稲葉といえば『報道ステーション』(テレビ朝日)の野球解説者のイメージが強いが、現在も球団の重職に就き、現役時代から引き続き背番号「41」を与えられている。
そして「報ステ野球解説者」といえば、前任者が工藤公康ソフトバンク監督で、その前が栗山監督。巷でささやかれている「監督への階段」だ。
指導者としても2015年から侍ジャパンのコーチを務めている稲葉は、その階段を着実に登っているといえる。
過去にも驚きの人材登用を行った日本ハム。前回の栗山監督就任のような外部招聘というサプライズがないとはいえないが、いつの日かこの3名のレジェンドが胴上げされる日を楽しみに待ちたい。
文=サトウタカシ (さとう・たかし)