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アジアウインターリーグ開幕! 実戦を積むだけじゃない! 意外なもう1つの狙いとは?

どんな場でも発揮できる力が真の実力


 台湾プロ野球CPBLの肝いりで3年前に始まったアジアウインターリーグ。資金難から昨年は中断したが、日本・韓国・台湾の若手選手で構成される選抜チームに、ヨーロッパの選抜チーム「麗寶欧州」と、大学生で構成される「中華培訓」を加えた5チームによるリーグ戦として、今年再開された。

 NPBはこのリーグに、広島を除くセ・リーグ5球団とソフトバンクの若手選手でチームを編成して、臨んでいる。2012年から引き続いて監督を引き受けている大森剛(巨人)に、このウインターリーグに参加する心構えを聞いた。

「選手たちには、『対応力』、『準備』、『セルフコントロール』の3つテーマを最初に示しています。日本とは違う環境で、ボールも違えば、グラウンドの土も違う。審判も違う。戸惑うことも多いでしょう。でも、そういう場で発揮できるのが真の実力なんです。だから、どんな場面でも、しっかりと備え、自分を保ち、高いレベルでプレーする。それを選手たちにはここで学んでほしいですね」

 国際試合という意識なく、あくまで育成目的であることを強調する。

「別に日の丸背負って来ているわけじゃないですし、それだけの選手たちでもないです。だから、相手がどこだというのも全く意識してません。選手たちには、秋季キャンプで取り組んできたことを『この今年最後の実戦の場で試しなさい』と言っています。それができるのは、彼らだけなんですから」

 各球団から若い選手を預かる立場から、勝敗にはこだわらず、全選手に均等にチャンスを与えることにしているという。

「もちろん、負けていいとは言いません。まあ、試合展開によって臨機応変に対応しなければならないこともありますが、もう選手をどこで使うかは決めていますよ」

「いろんな国と対戦するより、混成チームの方にメリットを感じています」


 そして、このリーグのメリットとして、「混成チーム」であることを強調する。

「(各球団から参加した)コーチ陣には、できる限り自分のチーム以外の選手を指導するようお願いしています。やはりシーズン中、同じコーチから同じ言い方で指導されていても伝わらないこともありますから。違うアプローチをされることによって選手も気づくことがあるでしょう。こんないい機会はないですよ。いろんな国と対戦するより、そちらの方にメリットを感じています」

 その意図は、参加している選手にも十分伝わっているようだ。試合前、ヤクルトの斉藤宜之コーチからティーバッティングの指導を受けていた桂依央利(中日)は、「今までずっと取り組んできたことは大事」だとしながらも、違う言い回しでのアドバイスは刺激になっている。捕手というポジション柄、とにかく試合に出ることが大事だとこのリーグへの参加を前向きにとらえている。また、国外でのプレーの難しさもひとつの経験だと言う。

「練習時間が短い中、ゲームで結果を出すこと、スケジュール通りにいかない中でパフォーマンスを発揮することも大事ですから」


 ソフトバンクの上林誠知も、いつもと違うコーチからの指導は新鮮だと言い、秋季キャンプで取り組んできた『タイミングをゆったりとる、という課題を試したい』とこのリーグの抱負を述べてくれた。



見えないものを見ようとして


 本来ならオフになる12月の終わりまで行われるウインターリーグに参加した選手の多くは、球団からの打診に応じて台湾まで来ている。いわば、究極の「居残り練習」だ。しかし裏を返せば、それだけ球団からの期待も高いということ。

 高卒2年目の2013年に5本塁打を放ち、レギュラーを取るかと思われながら、伸び悩みの続く高橋周平(中日)は、その代表だろう。

「来年につながる『何か』をここで得たいです。日本では見ることができないものが見えるんじゃないかと思って」

 と抱負を語る。取材したヨーロッパ戦では、初回にきっちりレフトに犠牲フライを放つと、その後もライトに2塁打、センターオーバーの3塁打と、大きな当たりを広角に打ち分けていた。


 自ら志願して参加したのは高橋と同じ高卒4年目の巨人の今村信貴だ。ルーキーイヤーにファームでノーヒットノーランを演じてみせると、2年目には左腕としては球団史上3人目の10代での勝利投手となるなど、将来の左のエースの期待が高まったが、今シーズンは1軍での登板はなしに終わっている。

「結果が出なかったので、球団から配布されたアンケートで希望を出しました。今までと違った環境で、他球団の選手と一緒にプレーすることで違った視線から野球を見ることができるんじゃないかと」

 と殻を破るつもりで台湾にやってきた。ただ漠然と環境を変えればなんとかなる、というのではなく、自身でしっかり課題をもって臨んでいる。

「久々の実戦なんで、左バッターに対してどういうピッチングをするかをテーマにしています。とくにチェンジアップで三振を取ることをイメージしていきます」

 その言葉通り、ダイヤモンドバックス傘下のドイツ人マイナーリーガー、マイク・エームックから三振を奪っている。



 このリーグに参加した選手たちは、「来年が勝負ですから」と一様に口をそろえる。今や押しも押されもせぬ日本の看板選手に育った山田哲人(ヤクルト)もこのリーグで汗を流した。この時期まで、慣れない環境で野球に取り組んだ彼ら「ウインターリーグ居残り組」が来年の春にどう化けているか? これから冬を迎えるというのに、楽しみでしようがない。


文=阿佐智(あさ・さとし)
1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。野球記事以外の仕事も希望しているが、なぜかお声がかからない。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)

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