高校野球コース別プロ入り物語 甲子園・地方大会の星からプロのスターへ! 王道を歩み続ける男たち
毎年、春と夏に行われ、多くのドラマを生んでいる甲子園大会。古くは荒木大輔(元ヤクルト)や松坂大輔(ソフトバンク)など、数々の名選手が大会で名を馳せ、プロへの道へ進んで行った。まさに登竜門といえる場所だ。
とはいえ、甲子園だけがプロへの道ではない。斎藤雅樹(元巨人)や秋山幸二(元西武ほか)らのように、地方大会で敗れながらもその実力を認められ、高卒でプロ入りし、大成した選手も数多くいる。
そこで今回から4回に渡り、「甲子園活躍型」と「地方大会活躍型」に分けて、王道を進んでプロ入りした選手を紹介していく。
これぞ「本流」の代名詞
イマドキの「甲子園活躍型」選手の筆頭といえば、阪神の藤浪晋太郎だろう。
3年時の春と夏の甲子園で、母校・大阪桐蔭高を初の春夏連覇に導き、その年の国体を制して、松坂以来の「高校三冠」達成。190センチを超える長身から、150キロを超えるストレートと多彩な変化球を繰り出し、甲子園での防御率は1.07を記録。まさに無敵のピッチャーだ。
そして2012年のドラフト会議で阪神に1位指名されると、その実力を遺憾なく発揮して、ルーキーイヤーから2桁勝利(10勝)を達成。2年目、3年目も11勝、14勝と、まったく期待を裏切らないピッチングを披露しており、どこまで勝ち続けるのか、阪神ファンでなくとも楽しみである。
このように“全てのプロ野球ファン”に期待感を持たせてくれるところも、過去のスターに通じるところ。これからも“藤浪の庭”とも言える甲子園を舞台に、王道を歩み続けるだろう。
高校時代につかめなかった金メダルをプロで
続いては、「地方大会活躍型」選手を探っていく。藤浪に対する同世代の選手と考えると、ソフトバンクの武田翔太を挙げたい。昨年、18年ぶりの甲子園出場に沸いた宮崎日大高で1年の秋からエースになり、その長身と素質から「九州のダルビッシュ」と呼ばれていた。そんな武田の高校時代を振り返ると……。
1年時の秋→九州地区大会1回戦で敗退
2年時の夏→宮崎大会準々決勝で敗退
2年時の秋→県大会準々決勝で敗退
3年時の夏→宮崎大会準々決勝で敗退
このように、ほぼベスト8止まり。ちなみに最後の夏は、9回裏に脱水症状で足がつったことで降板すると、後続の投手が打たれてサヨナラ負けを喫するなど、なんとも悔やまれる負け方をした。
金メダルはおろか、銀メダルにも手が届かなかった高校時代の武田だったが、ソフトバンクから2011年のドラフト会議で1位指名される。
そして1年目の夏に1軍初登板・初先発を果たすと、初球で151キロのストレートを投げるなど、物おじしないピッチングで初勝利を達成。すると飢えていた白星を貪るかのように、8勝(1敗)を挙げた。
2年目、3年目は今ひとつだったが、日本一になった昨季に再び13勝(6敗)とブレイクし、侍ジャパンの一員としてプレミア12にも出場。また今季は早くも6勝(1敗)を挙げており、順調なまでに鷹のエースへの階段を駆け上がっている。果たして、自慢のスマイルが崩れる日は来るのか。
孤軍奮闘の中で手にしたプロの切符
「地方大会活躍型」選手としては、もう1人、中日の若松駿太にも触れておきたい。
福岡の祐誠高で2年秋から投手を始めた若松。2年時の秋季大会、3年時の福岡大会ともに2回戦で敗退と、武田以上に甲子園は縁遠かった。
しかし秋季大会では、前年に甲子園に出場した西日本短大付を6回2失点に抑える力投を披露するなど、非凡な才能を垣間見せていた。そんなダイヤの原石を見逃すまいと、2012年のドラフト会議で中日が7位指名し、その3年後に2桁勝利するまでの投手に育て上げた。
チームとしての結果がついてこなくとも、頑張っていればきっと見てくれている人がいる。若松のプロ入りは、多くの高校球児を勇気づけたはずだ。
プロの舞台で全国の星と地域の星が激突
高校時代から王者として君臨していた藤浪、地方大会で活躍しながらも甲子園には手が届かなかった武田と若松。前者はプロに入ってしかるべきだが、後者も今や、プロとしてファンを沸かせている。
プロになってからの戦いを見るのも面白いが、それぞれのバックボーンを知ると、より味わい深くなるというもの。例えば若松のように、高校時代は雲の上の存在だっただろう藤浪と戦える機会を得ることができたのもの、プロに入ったからこそだ。
また実力者が集まる甲子園はもちろんだが、改めて地方大会も宝の山ということがわかるだろう。今年の夏は地方大会からチェックして、自分だけの「お宝選手」を見つけ出してみてはいかがだろうか。
次回は、同じチームに所属する「甲子園活躍型」選手と「地方大会活躍型」選手の経歴を紹介する。
文=森田真悟(もりた・しんご)
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