2012年、2016年と五輪正式種目から外れた野球競技。来年の東京五輪では追加種目として復活するものの、2024年のパリ五輪では実施されない見込みだ。
その風潮のなかで海外を中心にチラホラと出てきているのは、「野球を7イニング制にしては?」という声。実際に2020年のU-23ワールドカップなどの大会では、7イニング制が開始される。
「時短」の声に押される野球界。今回、「もしプロ野球が7イニング制になったら」を考えてみたい。
まず先発投手の役割が変わってくるだろう。現在は6回を投げ、7、8、9回を勝利の方程式でつなぐやり方が主流であり、オーソドックスな勝ち試合の展開だ。
ただ、7イニング制では、継投も早めになりそう。4回を2失点くらいでクオリティスタート。球数も抑えられるため、5人で中4日をまわすローテーションが有力になるだろうか。
当然、勝負の場面も早まってくる。序盤の2、3回でもチャンスがあれば、畳み掛けなければいけない。
実際に7イニング制の中学野球やソフトボールの世界では、3、4、5がクリーンアップで変わらない。ここは1回の好循環を考えれば揺るがないだろう。
ただ、プロ野球の世界となると、今度は「代打屋」が多く控えることになりそうだ。先発陣を守備型でまとめ、チャンスでは即代打の切り札を使うチームも増えるだろう。
そうなると「守備要員→代打→守備固め」という起用法の可能性も出てくる。その手間を考えれば、野手は増える。となると、どういった選手を揃えるかというバランスは変わるかもしれないが、「選手の総数」そのものは意外と減らないとみた。
また、投手のやりくりを考えると、セ・リーグでもDH制の導入が現実的だろう。
もうひとつ、考えなければならないのは、ファン目線でのコスパの問題だ。チケット代も9分の7程度になるはずだ。
そして球場内や周辺にも異変が起こるだろう。サクッと2時間で試合終了した場合の「勝利の一杯」の需要が高まる。
収入が減る球団側としては、外で飲まれるよりも内でお金を落としてくれた方がいい。観客席は早々に締めるとしても、球場の外にビアガーデンを設けるような球団も出てくるだろう。
ただしお酒の席が盛り上がったとしても、“プロ野球”としての魅力は半減すると筆者は思う。「競技」と「エンターテイメント」は分けて考えるべきだろう。
文=落合初春(おちあい・もとはる)