苦戦を強いられているものの、今季のロッテは面白い。新加入のレアードが息を吹き返し、中村奨吾もパワーアップ。打線に迫力が出てきた。
そんなロッテだが、開幕前に心配されていたのは、鈴木大地の定位置。昨季はサードを守っていたが、レアードの加入でサードが埋まり、さらに指名打者でもバルガスが加入。功労者が追いやられているようにも見えた。
これまで大きく貢献しながら、チーム事情でコンバートを余儀なくされてきた“報われない男”鈴木大地の今はどうだ。
開幕戦では三塁にレアード、指名打者にバルガスの布陣で、スタメンに鈴木大地の名前はなかった。オープン戦では14試合、32打席で打率.310。好調をキープしていたが、開幕戦ではまさかの出番なし。
確かにこれまでの成績を見ると良くも悪くも安定しており、非常に悪く言えば「夢のない」感じも否めない。
ただ結局、鈴木大地はスタメンに舞い戻るのだ。
開幕後、昨季の主砲だった井上晴哉の調子がまったく上がらず、スタメン落ち。一塁の穴に飛び込んだのは、“やはり”というべきか、鈴木大地だった。
オープン戦から一塁で出場する場面もあったが、結局こうなるのが、鈴木大地の凄みだ。プロ入りから、遊撃、二塁、三塁、一塁と内野の全ポジションでスタメンをつかみ、なおかつ今年も4月23日時点で無失策。一塁守備もかなりの安定感を誇っている。
ここまでユーティリティー性を増すと、むしろ「夢がある」と感じるファンも少なくないだろう。
打撃はオープン戦ほどの調子ではなく、数字の面では低調なスタートだったと言わざるを得ない。しかし、サヨナラタイムリーや終盤の同点弾など、クラッチヒッターの役割を果たしている。
そして、井上晴哉が戻ってくるタイミングで二塁の中村奨吾が練習中のアクシデントで左目下を10針縫うケガを負った。穴を埋めたのは、もちろん鈴木大地だ。
また新助っ人のバルガスが、ムキムキの見た目とは裏腹に長打が量産できず、指名打者の枠も空きそうだ。中村奨吾が二塁に戻ってもスタメンの椅子は残っている状況だ。まぁ予想通りなわけだが、「予想」にうまくはまり込む鈴木大地はやっぱりあなどれない。
4月13日には国内FA権も獲得した。今後の打撃成績次第では他球団の食指が動いてもおかしくない。これが二塁と遊撃だけなら、フランチャイズプレーヤーになった気もする。
チーム事情にもまれ、得をする強運。次は手薄になっている外野での出場を夢見たい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)