プロ野球の開幕戦というものは、単に「143分の1試合」ではない。特に開幕投手は「選ばれし者」が務める栄誉だ。今季も3月25日のオープニングゲームに向け、各チームで人選が進められている。その中から、春季キャンプ終了までに開幕投手が発表された例を見ていこう。
2月22日午後2時22分22秒。関係者の持つ時計の針に目をやりながら、指揮官は口を開いた。
「2016年日本一に向かってチームは進みます。開幕投手、大谷翔平でいきます」
日本ハム・栗山英樹監督は昨季に引き続き、大谷に初陣を託すことを発表。2並びの時間に合わせて発表したのは、投手と野手の“二”刀流が代名詞の大谷を意識してのものに違いない。
ちなみに栗山監督といえば、毎年趣向を凝らした開幕投手の発表を行っている。昨季の大谷の場合は、ミスタープロ野球・長嶋茂雄の誕生日である2月20日11時11分に情報を解禁。11時11分というのは当然、大谷の背番号11が由来だ。この時は「長嶋さんが作ってくれたプロ野球界を翔平が引き継いでほしい」という想いから、大谷に自身初の開幕投手を託している。
昨季の初陣は本拠地・札幌ドームで好投を見せ、勝利投手に輝いた大谷。今季は敵地・QVCマリンフィールドからのスタートとなる。体重増や新球・チェンジアップの評判も上々な二刀流男は、指揮官の熱き想いに応えられるか。
大谷翔平の高校の先輩で、憧れだったという快速サウスポーも大役を担う。西武・田邊徳雄監督は宮崎・南郷キャンプを打ち上げた2月19日、菊池雄星の開幕投手を公表。菊池にとってはプロ7年目で初の栄誉、球団としても工藤公康(現ソフトバンク監督)以来24年ぶりに左腕からのシーズン発進となる。
「山口を開幕戦の投手にしようと考えている」
まだ正月気分の抜けない1月4日、DeNA・ラミレス新監督が球団の仕事始めで大発表を行った。昨季わずか3勝に終わった山口俊を広島との開幕戦(@マツダスタジアム)にぶつけるというのだ。
元々チームメートとして接していた頃から、山口の潜在能力を買っていたラミレス監督。先述の発表時にも「エースになり得る器」「今年10〜15勝できる」と絶賛している。また、秋季キャンプで山口本人が猛アピールを行っていたことも決断を後押しした模様。日本球界を知り尽くすベネズエラ人指揮官は、今季11年目を迎える背番号11と心中する覚悟だ。
<セ・リーグ>
巨人(菅野智之)vs.ヤクルト(小川泰弘)
@東京ドーム
阪神(メッセンジャー)vs.中日(大野雄大)
@京セラドーム大阪
広島(ジョンソン)vs.DeNA(山口俊)
@マツダスタジアム
<パ・リーグ>
楽天(則本昂大)vs.ソフトバンク(攝津正)
@koboスタ宮城
西武(菊池雄星)vs.オリックス(金子千尋)
@西武プリンスドーム
ロッテ(涌井秀章)vs.日本ハム(大谷翔平)
@QVCマリンフィールド
文=加賀一輝(かが・いっき)