11月13日、来シーズンのユニフォームを賭けた12球団合同トライアウトがタマホームスタジアム筑後で開催された。ノーアウト、カウント1ボール1ストライクから開始するシート打撃が48人の選手によって行われた。
参加選手たちは、最後のユニフォーム姿となるかもしれない緊張感のなか、各球団スカウトの前で全力プレーを見せた。
(※カッコ内のチーム名は戦力外通告時の球団)
成瀬善久(ヤクルト)や西岡剛(阪神)らタイトルホルダーも参加した今年のトライアウト。その他にも、吉村裕基、城所龍磨(ともにソフトバンク)のように30本塁打の大台経験者や交流戦MVPといった実績のある選手が名を連ねるなか、最初に契約を勝ち取ったのは中井大介(巨人)だった。
中井は成瀬から二塁打を放つなど、3打数1安打に2四球の結果を残した。また、守備でも内・外野を守り、巨人で培ったユーティリティープレーヤーぶりを見せたのもアピールポイントとなった。
もちろん、中井と契約したDeNAはトライアウト前から調査していただろう。しかし、結果としてトライアウト受験後の最終判断で獲得に至ったはず。DeNAでは二塁のポジション争いに加わることが濃厚となっており、戦力外、トライアウトを経てのレギュラー獲得を期待したい。
11月27日現在で契約を勝ち取ったのは中井だけだが、トライアウトで好結果を残した選手は他にもいる。たとえば、コラレス(楽天)もそのひとりだ。西岡剛、今成亮太(阪神)、青山誠(巨人)の3人を相手に三者連続三振。最速150キロを記録し大きくアピールできた。
コラレスは外国人枠の関係もあり、各球団とも簡単に手を出しにくい事情はある。しかし、ここから補強がうまく進まなかった球団が最後の保険として獲得に名乗り出る可能性はありそうだ。
そしてもうひとり。身長201センチ右腕の廖任磊(巨人)だ。廖は鵜久森淳志(ヤクルト)、高橋洸(前巨人)、河野元貴(巨人)の3人から2三振を奪い、無安打投球を見せた。最速はコラレスよりも速い152キロ。中継ぎとして起用すれば面白い存在となりそう。
廖は台湾の開南大出身だが、岡山共生高に3年間通っていた。NPBのドラフトを経由してプロ入りをしているために、陽岱鋼(巨人)と同じく外国人枠の適用はなく日本人扱いとなる。西武が獲得の意思ありとの報道が出ているが、はたして。
野手陣では城所も結果を残した。2打席凡退で迎えた3打席目で四球を選び出塁すると、盗塁に成功する。その後の第4打席、第5打席で連続安打を放ち、4打数2安打、1盗塁を記録した。
2016年のセ・パ交流戦でMVPを受賞し、「城所待機中」のTシャツも大ヒットした城所。守備・走塁はまだまだ衰えていない。それに加え、打撃面では最大限のアピールに成功した。レギュラーは難しいかもしれないが、試合終盤の守備固めや代走要員として獲得する球団があってもおかしくないはず。来シーズンは34歳となるが、老け込むにはまだ早い。契約を勝ち取り、もう一花咲かせたい。
近年は左の代打として活躍した枡田慎太郎(楽天)も2打席連続安打を放ち、存在をアピールした。代打としての勝負強さ、そして一発がある。獲得を検討する球団が現れてもおかしくない……と思われたが、11月26日までに連絡がなかったため、現役引退を発表。お疲れ様でした。
トライアウトからNPB各球団との契約を勝ち取るのは至難の業だ。昨年も合格者は田代将太郎(西武→ヤクルト)、山崎憲晴(DeNA→阪神)と二人だけ。二人以外を見ると、大隣憲司(ソフトバンク→ロッテ)はトライアウトだけでなく、球団テストを受けた上での契約だった。
今年も昨年と厳しい状況は大きく変わらないはず。現時点で契約を勝ち取ったのは中井ただ一人だが、ここから一人でも多くの選手が来シーズンの契約を手に入れることを期待したい。
文=勝田聡(かつた・さとし)