体が資本のアスリートにケガや病気などのアクシデントはつきもの。もちろん、プロ野球選手も例外ではない。最近で、目立ったケースをピックアップしてみたい。
今季の飛躍が大いに期待される清宮幸太郎は、3月3日のオープン戦で右手の有鈎骨を骨折したことが、翌4日に球団から発表された。
有鈎骨は手のひらの骨で、小指の付け根と手首を結んだ線上の手首に近い部分にある。左打者でバットをグリップエンドいっぱいまで長く持つ清宮は、右手の有鈎骨部分が、ちょうどグリップエンドに当たる。手のひらの肉が盛り上がっている部分なので、直接、グリップと骨がこすれるわけではないものの、プロの選手のスイング、そしてボールを叩いたときの衝撃はかなりのもの。
今回の故障は、ファウルを打ったときに痛めたことが直接の契機だが、清宮は高校時代から手のひらの有鈎骨部分にマメができており、プロ入りしてからも、手首の痛みに悩まされていた。もしかすると、該当箇所にダメージが蓄積していた可能性もある。
シーズンが始まったにもかかわらず、試合に出られないというのは、本人も悔しいだろうが、過去にチームの先輩である中田翔など多くの強打者が苦しんできた症状でもある。
発表翌日には手術も終え、現在では守備練習なども行い、順調に回復のプロセスを踏んでいる模様。春の大型連休前後には、その勇姿が見られるのではないだろうか。
ソフトバンクの中村晃は、3月6日の西武とのオープン戦を最後に実戦から離れており、脇腹を痛めたことも明らかになっていた。しかし、その負傷とは別に、23日にあらためて自律神経失調症であることが球団から発表されている。
くわしい症状は公表されていないため、現状は不明だが、ひとまず自宅療養を続け、回復を待つようだ。2017年はソフトバンクでプレーした川崎宗則も同様の病状で、事実上の引退状態に追い込まれているだけに、長引く可能性もある。
川崎は2018年3月、ソフトバンクから自由契約となる時のコメントで「体を動かすのを拒絶するようになってしまいました」と語っており、中村も心身の歯車が噛み合っていない状況なのだろう。ソフトバンクの3年連続日本一には欠かせないピースではあるが、まずは体調を戻すことが先決だ。
一方で、パニック症を公表したのがロッテの永野将司だ。
突然、動悸や発汗、めまいなどの発作に襲われるパニック症は、近年、著名人が公表するようになったこともあり、世の中の認知度も高まってきている。
永野の場合は、そのなかの広場恐怖症と言われるもの。これは、閉ざされた場所にいると、「いま発作が起きたらどうしよう」と先回りして不安感を覚えるようになり、その恐怖で電車などの交通機関を利用できなくなったり、実際に発作が起きてしまうなど、日常生活にも支障が出てしまう症状だ。
永野は、学生時代からこういった症状があり、プロ入り後も移動には球団から配慮されているようだ。
ルーキーイヤーの昨シーズンは4試合に登板し、プロの雰囲気もつかんだ永野。さらなるステップアップを目指すためにも、症状とうまく付き合って、また1軍マウンドでの躍動を期待したい。
骨折などの外傷は手術や治療により完治する場合も多いのに対して、内面的な不調は、原因の特定や完治が難しいという面がある。ましてや、根性論で乗り切れるものでもないだろう。
グラウンドで華やかにプレーする選手たちも、その裏では、壮絶なプレッシャーにさらされており、心身が受けるストレスは計り知れない。そういったことも発症要因のひとつなのかもしれない。
ここまでは、主にプレーすることに支障がある状況を取り上げたが、それとは次元の違う病魔に襲われたのが、阪神の原口文仁だ。キャンプインも間近に迫った今年の1月24日に、自身のツイッターで明かした病名は「大腸がん」。日本人の3〜4人に1人はがんで亡くなるという時代なだけに、ショックを受けた球界関係者、ファンも多かったはずだ。
幸いにも手術は成功し、すでに1軍復帰を目指してファームで汗を流している。
また、原口と在籍時期は重なってはいないが、かつては同じタテジマのユニフォームを着ていたこともある赤松真人(広島)も、2016年末に「胃がん」が発見されたことを公表。手術、リハビリを経て、昨シーズンは2軍戦で55試合に出場するまでに回復している。
病気が病気だけに軽々には言えないが、原口や赤松が1軍のグラウンドに戻ってくれば、勇気づけられる人も多いはず。急かすことなく復活を待ちたい。
文=藤山剣(ふじやま・けん)