メジャーリーグに目を向けると、2008年、カージナルスがシーズン通して「8番・投手」のオーダーを敷いた。これは名将トニー・ラルーサ監督の策。将来有望なルーキー・アディソンを8番に据えたいが、それでは敬遠され、打撃機会が奪われるケースが増える。そこでアディソンを「敬遠から守る」ために、投手の後の9番に置いたという。
普通は、8番に投手を置くのは、打撃のいい投手をより多くの打席に立たせるためと考えるかもしれない。DeNAも最初に8番に投手を置いた試合は、打撃を得意とするウイーランドが登板した日だった。
しかし、ラミレス監督が「8番・投手」の打線を組む際、9番には必ず倉本寿彦が座っている。昨シーズン、ハイアベレージを維持した倉本を「影のリードオフマン」として9番に置きたい意図があるのだろうと推測する。
ラミレス監督以外にも、日本で「8番・投手」を多用した監督は存在した。最近では、巨人の堀内恒夫元監督が挙げられる。
2004年から2005年にかけて堀内監督は13試合で「8番・投手」のオーダーを組んだ。このときの9番はほぼ仁志敏久。9番・仁志、1番・清水隆行、2番・二岡智宏が塁を埋め、ローズ、小久保裕紀、清原和博の強力クリーンナップが走者を還すという戦略だった。
ここでも「9番・仁志」という形で固定され、9番が「影のリードオフマン」役を担っていた。
なお、阪神時代の岡田監督も2004年と2007年に、8試合で「8番・投手」のオーダーを組んでいる。
現状、DeNAが「8番・投手」の効果で試合を制したかと聞かれれば、必ずしもそうとは言えない。もし、これが上策ならば、多くの球団で採用されているだろう。そういう意味では、ハマれば大幅な得点力アップが見込めるが、なかなか難しいオーダーなのかもしれない。
結果によって戦略の成果は判断される。ラミレス監督は「8番・投手」の成果をどう判断するのだろうか。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)