ドラフト会議まであと1カ月と少しになった。各球団は候補者のリストアップを行い、運命の日まで入念に各候補の調査を行っていることだろう。一方、ドラフト指名を勝ち取りたい選手たちはトレーニングを続けているはずだ。
今回はドラフトでの上位指名が確実視される選手たちへ、おすすめしたい球団を独断と偏見で選んでみた。もちろん、選手の胸中を探っているわけではなく、球団の指名リストを手に入れたわけでもない。
今年のドラフトで大注目の佐々木朗希(大船渡高)。高校3年間で甲子園には出場できなかったが、知名度は全国区。160キロ右腕の存在はドラフトファンなら誰しもが知っていることだろう。そんな佐々木におすすめしたいのがオリックスだ。
現在のオリックスは山岡泰輔、山本由伸、榊原翼、K-鈴木、田嶋大樹など近年のドラフトで獲得した投手たちが、ローテーションに入っている。ローテーション要員に大きな故障などなければ、無理して育っていない選手を1軍で使うこともないだろう。
もちろん佐々木の実力次第ではあるが、オリックスなら1年目は体作りに専念できるのではないだろうか。また日本ハムでダルビッシュ有(カブス)を育て、一緒に海を渡りレンジャーズへ入団し、その後もパドレスで育成に携わったトレーナーの中垣征一郎氏(※)の存在も大きい。昨シーズンオフにオリックスへ加わったばかりだが、その名前は至るところで報道されている。
ダルビッシュを育てたトレーナーが佐々木を育てることになるとおもしろい。
(※中垣征一郎氏のオリックスでの肩書は育成統括GM補佐兼パフォーマンス・ディレクター)
今夏の甲子園では惜しくも準優勝に終わった奥川恭伸(星稜高)。佐々木と並んで今秋のドラフトで大きな注目されている。投手としての完成度は非常に高く、テレビ番組では菅野智之(巨人)も絶賛していたほど。
韓国で行われたWBSC U-18ベースボールワールドカップでは、9月5日のカナダ戦に登板。7回1失点、18奪三振と圧巻の投球で、その力を見せつけている。
そんな奥川には楽天を推ししたい。これまでに田中将大(ヤンキース)、松井裕樹と高卒の目玉投手をしっかりと育て上げたことが理由の一つだ。
また、石井一久GMが就任したことも影響しているのか、今シーズンは投手の起用もかなり柔軟になった。中継ぎ、先発と適性を見ながらシーズン中でも配置転換を行い、その選手がもっとも生きるであろう役割を与えている印象がある。
由規のように故障がある投手を無理させず、回復を待ちながら起用している点も投手にとっては嬉しい配慮だろう。
そのほかに星稜高の先輩にあたる島内宏明、投手では同じ石川出身の釜田佳直(金沢高)が在籍しているのも大きい。奥川はシャイであるためチームに溶け込むのに時間がかかる可能性がある。その不安を母校の先輩と同郷の先輩が和らげてくれるだろう。
楽天は大注目の奥川を指名するだろうか。
高校生に注目がいきがちな今年のドラフト候補だが、大学生にも目玉はいる。その一人が森下暢仁(明治大)。今春のリーグ戦では4勝1敗、防御率2.03と好成績を残し優勝に貢献。大学選手権では2試合に登板し18回を投げ自責点はわずかに「1」。最高殊勲選手、最優秀投手に輝いた明治大のエースである。
森下には佐々木のような160キロに迫るストレートはない。しかし球速は150キロを超え、カットボール、スライダー、カーブと変化球を駆使しながら三振の山を積み上げる。文句なしのドラフト1位候補である。大学生ということもあり、入団した球団によっては開幕ローテーションを任されることになりそうだ。
そんな森下にオススメなのが中日である。中日は今シーズン、明治大の先輩にあたる柳裕也がブレイクし、大野雄大と2枚看板になりつつある。ほかにも笠原祥太郎や梅津晃大など大卒の若い投手がここ数年で一気に伸びてきた。大卒投手の育つ土壌があることは大きい。
森下は大学2年時に肩を痛めている。故障歴のある選手を獲得し、育て上げた実績は枚挙に暇がない。大野もそうだし吉見一起もそうだ。
さらには故・星野仙一氏や川上憲伸を見てもわかるとおり“明治大のエースから中日へのエースへ”という系譜もある。
このように様々な面で中日と森下はマッチするのだ。ただ、現時点での報道を見ると中日は奥川に入札しそうではあるが…。
終盤で手痛いエラーを犯したものの、U-18ベースボールワールドカップでグンと株を上げた石川昂弥(東邦高)。日本代表の4番に君臨し、ここぞで打点を挙げる姿はまさに主砲。夏の甲子園に出場できなかった鬱憤を晴らす活躍ぶりだった。
センバツで優勝した際は「二刀流」としてだったが、プロでは野手一本が既定路線となる。そんな石川がマッチするのはヤクルトではないだろうか。
ヤクルトは左の長距離砲として村上宗隆がメキメキと成長中。それと対になる右の大砲候補は、是が非でもほしいところ。現在1軍には右の長距離砲としてはバレンティンと山田哲人がおり、2軍には濱田太貴が準備している。しかしバレンティンはすでに35歳。山田哲は27歳とまだ若いが、石川とは9つも年齢が離れている。
育てる時間を考えてもダブつくことはなく、問題はないだろう。また石川は東邦高では投手の他に三塁を守った。もちろん、プロに入ってからコンバートなどの可能性はあるが、現時点では山田哲、村上、濱田とポジションが重なることもない。すなわち共存が可能ということである。
ヤクルトは投手が毎年の課題ではあるが、2年前にはハズレ1位ではあるが村上を指名している。今年はどうでるか。
文=勝田聡(かつた・さとし)