2014年開幕直後に日本ハムとのトレードでヤクルトへ加入した今浪隆博。2015年からは代打の切り札、そして、ユーティリティープレーヤーとして活躍した。本人が「スタメンは嫌だ」と自虐的に語ったように、どちらかといえばサブとして生きる選手であったことは間違いない。終盤に様々な作戦を仕掛ける上でもベンチにいると重宝する存在だった。まさに1チームにひとり今浪がほしい、と言ってもいいだろう。
そんな今浪も甲状腺機能低下症を理由に残念ながら今シーズン限りで引退。来シーズン、今浪に次ぐユーティリティー枠に誰が座るのか楽しみでもあり心配でもある。今シーズンは今浪がほぼ1軍に不在だったこともあり、状況はさほど変わらないかもしれないが、あらためて今浪の後継者を探ってみたい。
今シーズン、もっともユーティリティープレーヤーといえるのは荒木貴裕だろう(一塁:50試合、三塁:15試合、遊撃:1試合、外野:4試合)。一塁がメインだったものの、三塁、遊撃、ときには外野も守った。また、代打でも打率.290(31打数9安打)とまずまずの成績を残し、期待に応えた。
2016年は藤井亮太、三輪正義らも複数ポジションを守りユーティリティープレーヤーとして機能した。しかし、今シーズンの藤井は川端慎吾の離脱もあり三塁に固定。三輪は1軍での出番がわずか16試合と十分な出場機会を得ることができなかった。
こうした流れのなかで、今浪ほど器用なタイプではないが、今シーズンは荒木が複数のポジションで起用される形となった。切り札といえる存在かどうかはさておき……。
ここ2年の状況を踏まえて、来シーズンはどのような陣容になるのだろうか。バレンティンが残留濃厚との報道が出ているが、外国人選手の状況が現時点では不明。その外国人選手の守備位置によって起用法は大きく変わってきそうだ。
とくに一塁に新外国人選手が入ると、荒木は控えに回ることが濃厚。そうなると、試合終盤での投手への代打、外国人選手の守備固めなどで起用されることになるだろう。また、三塁は川端がヘルニアから復帰予定。無事に復帰となると、藤井は昨季までの三輪の役割を果たすことになりそうだ。捕手登録から内野手登録になるものの、第三捕手の役割も可能だろう。緊急時に捕手が務まるユーリティープレーヤーはベンチにとってありがたい。
残念ながら現状では外崎のように活躍しそうな若手がいないのが実情だ。しかし、若手ではないが、ブレイク間近の荒木、藤井がユーティリティー枠となることで、チームが活性化することを期待したい。
文=勝田聡(かつたさとし)