今シーズンのプロ野球を総括する「プロ野球2014今年の話題総まとめ!」のコーナー。今回は今季のパ・リーグの捕手事情に迫ろう。セ・リーグと同様に、各球団ともレギュラー捕手の新陳代謝が高まり、将来有望な若手捕手たちの出場機会が増えている。「捕手は経験が必要」といわれるが、今季は多くの球団で、若手捕手が大きく経験を積んだシーズンになった。
まずはプロ7年目、昨年と同じく今季も137試合に出場した伊藤光(オリックス)を紹介したい。2007年、明徳義塾高から高校生ドラフト3巡目で入団した伊藤は25歳。リーグNo.1に輝いたチーム防御率2.89を陰で支え、自身の守備率.997もリーグNo.1。そんな伊藤が今季、優勝を逃した試合後にベンチで号泣した姿を覚えているファンも多いだろう。来季こそ、さらにひとまわり大きく成長して、喜びの涙に変えて欲しい。
今季のプロ野球は、ロッテの若手捕手たちも話題となった。ドラフト2位入団の1年目の吉田裕太、2年目の田村龍弘、4年目の江村直也らの熾烈な正捕手争いだ。シーズン前半は24歳の吉田が抜擢され、先輩捕手の金澤岳や川本良平をリード。ところが、夏場のプレー中に右足首を痛め、登録抹消。後半戦はほとんど出場できず、結果、50試合出場に終わった。
日本ハムは27歳の大野奨太が105試合に出場して、チーム投手陣を引っ張った。さらに、持ち前の打力センスを生かすために、まずは内野手としての起用が多い近藤健介はプロ3年目の21歳。ポストシーズンでも活躍しており、来季は内野手と捕手、どのような起用をされていくか、注目したい。
各球団とも若手捕手が伸びている中、唯一、例外なのがソフトバンクだろう。山崎勝己がFAでオリックスに移籍した代わりに、日本ハムから鶴岡慎也を獲得。その鶴岡が98試合に出場し、112試合に出場した細川亨と2人でホームベースを守り通した。高谷裕亮もその後ろに控え、1軍に上がることさえ難しくさせる厚い壁がある。
しかし、細川は2度目のFA資格を取得し、移籍の可能性もある。高谷も鶴岡も来年は34歳なので、若手捕手の台頭、特に2010年ドラフト1位入団の山下斐紹に期待がかかる。非凡な打撃技術と高い身体能力に定評のある山下はプロ4年目の今季も2軍暮らしが続いき、同じ22歳の拓也(甲斐拓也)と先発マスクを争った。ちなみに、拓也は、160センチと小柄だが、送球能力の高さ(「強肩」だけではない)は12球団すべての捕手と比較してもトップレベルと言われている。山下と同じ2010年の育成ドラフト6位で入団後、地道な努力でドラフト1位と肩を並べるまで成長した。どちらが、先に1軍に定着するか……。山下にはドラフト1位の意地を見せてもらいたい。
「名捕手あるところに覇権あり」とは野村克也氏(元南海ほか)の言葉だ。今季は両リーグともに、未来の正捕手候補たちが大きく経験を積んだシーズンとなった。ここにきて、阿部慎之助(巨人)が来季は捕手で出場しない報道があった。球界全体で、ますます捕手の世代交代が行われていきそうだ。来季以降、紹介した若手の中から誰が正捕手の座を射止めているのか、引き続き注目していきたい。
■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)…会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。"ファン目線を大切に"をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite