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注目選手レビュー(大会4日目から6日目)/明徳義塾、今治西、龍谷大平安、八戸学院光星、福知山成美、履正社編

明徳義塾高編


 まずはエース・岸潤一郎の粘り強いピッチングに触れないわけにはいかないだろう。最速は143キロながら15回にも140キロをマークするなど終始伸びを失わなかったストレート。カットボール、ツーシーム、フォーク、チェンジアップ、カーブに新球の120キロ台スライダーも満遍なく四隅に決まっていた。

 課題だったランナーを背負った時の制球力。しかし、1打席目に先制打を許した大石海斗と対した6回2死満塁の場面。外角低め137キロでセカンドゴロに仕留めた場面に象徴されるように学習能力の高さが光る。

「ストレートが高めに浮いた。昨年夏の日大山形戦と同じ」と本人は12回・山本龍河に食らった一発を反省材料としてあげたが、ここは初球から振り抜いた相手を誉めるべき。ゲームメイキングの高さは早稲田実業時代の斎藤佑樹(現日本ハム)をほうふつとさせる。この年代高校生投手としてはやはりトップレベルだろう。



 打者では4番・一塁手に座った西岡創太が大抜擢に応える働き。チーム初安打とサヨナラのきっかけをつくった2安打はいずれもセンター返しを心がけたもの。守備でも横の動きは想像以上によく、2回戦以降のブレイクが十分期待できる。


 その一方、西岡の前で「体が突っ込んで」6打席無安打に終わった多田桐吾。だが、駆け抜けタイムは1打席目の左飛オーバーランですら「4秒22」(かけ抜けで4秒をきると相当速い、と言われている)。守備でも15回表2死一、二塁から左前安打を「あのタイミングしかない」処理で本塁突入を防ぐなどスピードスターの片鱗は見えた。右打ちでの3安打とチームに攻略の範を示した森奨真二塁手のように、まずは逆方向へのバッティングで復調への糸口をつかみたい。


今治西高編


 正直、選手個々の姿が見えないまま終わってしまった印象が強い。「残念」の一語に尽きる。4番起用が濃厚だった福原健太右翼手は「インフルエンザの疑い」で甲子園でのプレーすら叶わず。チームの生命線である左腕・神野靖大と越智樹のバッテリーも序盤にコミュニケーション不足から痛打を次々と浴びることに。

 神野が「あごが上がっている」とボールが高めに浮いていた要因を自ら突き止め、後半に安定感を取り戻したことは夏に向けての好材料と言えなくもないが、最も神野を近くで見ているはずの越智樹が指摘・修正できなかったことは、ゲームを司る者として大いに反省してほしい。

 明るい材料は杉内洸貴三塁手。立花中3年時にKボール愛媛県選抜メンバーとして4番・秋川優史一塁手とともに第7回15U全国KB野球秋季大会ベスト4入り。その後、15U日本代表に選出され、15Uアジア選手権でも中心選手として活躍した杉内は、2安打と1得点につながるスキのない走塁で、大舞台での対応力の高さを満天下に披露した。



 グラウンドで最後に判断するのは自分。チーム全体を俯瞰できる力も含め、今治西の選手たちにはもっと野球に興味を持ち、野球を好きになってほしい。


龍谷大平安高編


 低く、伸びていく二塁送球が魅力の、もっと評価されていい強肩捕手・?橋佑八。「下から上へ」のメカニズムが体に染み付いた、スムーズでリズミカルなスローイングは大きな武器。外野からのバックホームが難しいバウンドになってもガッチリ捕球、クロスプレーでタッチアウトに。地味ながらいい仕事をする職人肌の捕手として、大学以上のレベルでも十分期待できる。また、打順は8番だったが、高校通算20弾近い強打者でもある。ややガニ股でドンと構え、懐に呼び込んで遠くへ飛ばす力がある。



 スピード感あふれる走攻守が目を引く?本健太朗。昨秋の明治神宮大会で実力を発揮したが、センバツの大島高戦では気負ったのか、試合の大勢が決した最終打席に二塁打を放ったのみ。結果も内容もアピールできるものは少なかった。やや狭いスタンスから軸足にしっかり体重を乗せて待ち、余計な動きやロスを生じさせないフォーム。次戦では本来のミート力を発揮したい。また守備では右中間を余裕で破りそうな飛球に、あわや追いつきそうな守備範囲の広さを見せた。



八戸学院光星高編


 横浜高を相手に完勝した八戸学院光星高。その1番打者・北條裕之は、北條史也(阪神)を兄に持ち、フルスイングが魅力の強打者。いつも第1打席、初球でのフルスイングにこだわりを持っているが、この日は横浜高・伊藤将司が初球にクイックモーションで投げ込む奇手を見せ、消化不良のショートゴロに。しかし、出鼻をくじかれながらも次打席では内角のストレートを振り切り、三塁線を破る二塁打。らしいスイングを見せた。

 しかし、「ドラフト候補」として見た時に、どうしても厳しい評価になりそうだ。この日のポジションは本来の遊撃手でなく三塁手。守備に定評のある2年生の足立悠哉に明け渡す格好になった。さらにプレーでのパワー、スピードを生み出す体内のエンジンという点から見ても、昨秋からの上積みが見られなかった。

 ただ、目を見張ったのが三塁前のゴロを猛ダッシュしてジャンピングスローしたプレー。普通に捕って投げても十分アウトにできただろうが、「自分を見てくれ!」という叫びを感じた。この野心こそ北條の最も大きな武器。強烈な自己主張で高い扉をこじ開けてほしい。

 北條裕之に勝るとも劣らない有望選手がひしめく八戸学院光星高。軸足にしっかり体重を乗せて思い切り良く振り抜く3番・森山大樹、レフトスタンドに叩き込むパンチ力をアピールした4番・深江大晟、5打席すべて芯でとらえラインドライブの強烈な打球を飛ばした5番・蔡鉦宇のクリーンアップ。さらに長身の6番打者・新井勝徳は長いリーチを生かした低めへの無類の強さを発揮した。そして投手では先発した2年生左腕・呉屋開斗は出色な制球力と130キロ前後のキレのあるストレートで好投し、リリーフした中川優も2年生とは思えないマウンドでの貫禄と、強打者に対する勝負強さを見せた。


福知山成美高編


 1回戦は好投手・柳川健大をきっちり打ち崩した神村学園高を完封した石原丈路。細かいレビューは前回の記事を参考にしていただきたい。この試合では思った以上に、芯の強さがある投手だと感じられた。ミート力にパワーもある山本卓弥から2三振。そして、センターフライの場面も「とらえられたか!?」というインパクトの瞬間だったものの、思った以上に伸びなかった。試合後の田所孝二監督のコメントで判明したことだが、完封したいオーラ、目線を出していた「投手らしさ」も買いたい。



 試合後半でも球質は変わらない印象だったが、コントロールがあるタイプではないので、球数が増え、登板間隔が少なくなった時の抑え方に注目したい。


履正社高編


 初戦・都小山台高戦では先発・溝田悠人があわやノーヒットノーランの快投を見せたため、出番がなかった最速147キロ右腕・永谷暢章。駒大苫小牧高戦では溝田が6点を失った3回途中から登板。投げたくてウズウズしたかったのが、マウンドでの猛烈な腕の振りからはっきりと見えた。初球にいきなり144キロを投げ込むと、5回には自身最速タイの147キロをマークするなど三者連続三振。結局、6回1/3を投げて、1安打10奪三振の快投で、チームの逆転サヨナラ勝ちを呼び込んだ。

 ブルペンで見ていた印象通り、やはり威圧感とストレートのスピード・球威で押し込める馬力型。時折決まった低めのストレートには角度も感じた。そして終盤、甲子園マウンドに慣れてくると、スライダーでも空振りを奪えるように。ただ、やはりブルペンでもそうだったように、ボールが総じてベルト付近の高さに集まっていた。いずれスピードに慣れられた時にどうするか。変化球を磨くのか、ストレートの質をさらに磨くのか……。いずれにせよ、この日の快投で来年のドラフトを騒がせる一人として大きくアピールしたことは確かだ。



 4回2死二、三塁で迎えた中山翔太は、内角高めを攻められて詰まらされセカンドフライ。初戦・都小山台高戦でも露呈したが、やはり真ん中から内寄りの高めに対する弱点がハッキリ。それでも飛ばせる右打者は希少で、我慢強く見守りたい。真ん中から外寄りのボールに対して強く、飛ばせるツボを持っている。そのゾーンの打ち損じをいかに減らせるか。


■四国地区担当ライター・プロフィール
寺下 友徳(てらした・とものり)/1971年生まれ。2007年2月より関東から愛媛県松山市に移住し、四国の野球・スポーツを追求中。『週間サッカーダイジェスト』(日本スポーツ企画社)、 『サッカー批評』(双葉社)他、多数媒体での執筆実績あり。人間として幅を広げると同時に、新たな業態へのチャレンジも。Twitterアカウントは@t_terashita

■東北・近畿地区担当・編集部

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