「松坂世代」の代表格といえば藤川球児(阪神)を挙げる人も多いだろう。全盛期には、ホップして見えるとまで言われた「火の玉ストレート」を武器に絶対的クローザーとして活躍。球史に名を残す名投手となった。
2013年にはメジャーリーグへ挑戦。2015年に四国アイランドリーグplus・高知ファイティングドッグスに在籍したのち、ファンからの熱烈な支持を受け古巣・阪神に復帰した。
しかし、ここ数年を振り返るとケガの影響でメジャーでは満足いく活躍ができず、昨シーズンも全盛期に比べると寂しい成績に終わった……。
■藤川球児の2016年通算成績
43試合:5勝6敗/3セーブ/10ホールド/防御率4.60
昨シーズンの数字を見る限り、ファンの期待を裏切る形となったのは否めない。
シーズン序盤は先発として起用され、5試合で1勝2敗、防御率6.12と振るわなかった。結果的にこの先発起用が失敗につながったと見る向きもある。
その後、本来の抑えに戻ると先発時よりは安定した投球を見せたが、ファンの心を鷲掴みにした「火の玉ストレート」は、最後まで復活することはなかった。
苦境のなかで迎える今シーズンは、最初から抑えでの起用が予想される。2年契約の最終年だ。ここで活躍しなければ藤川とて引退の危機に直面するのは間違いない。「火の玉ストレート」が復活するのか? 注目したい。
続いて取り上げるのはヤクルトの右のエース・館山昌平だ。
2015年はヒジの故障から復活し、1019日ぶりの先発勝利。リーグ優勝にも大きく貢献した。しかし、昨シーズンは散々な結果に終わってしまった。
■館山昌平の2016年通算成績
10試合:1勝4敗/1ホールド/防御率7.24
4月には、自身5度目となる右ヒジの手術を受けるアクシデントに見舞われた。それでも驚異的な回復を見せ、7月に1軍復帰。しかし、結果はついてこなかった。
ヒジの調子もさることながら、通算与四球率1.97と、抜群の制球力を誇っていたが、昨シーズンは5.86と大きく悪化。制球力は館山の投球の生命線だけに、この不調が厳しい事態を招いた。
年齢的にも長いイニングを投げるのが難しくなりつつある。今シーズンは館山にとって正念場の年となるだろう。球の勢いは衰えていないだけに、制球力の復活が復活のカギとなりそうだ。
これまで3度のトミー・ジョン手術を受け、全身に151針を縫うほど多くのケガと闘いながら、野球への強い情熱と精神力でここまでやってきた。ヤクルトの誇る右のエースは、逆境に立つほどに蘇ることをファンは皆知っている。
シーズンオフには若手の教育リーグ的位置付けのフェニックス・リーグに志願の参戦。気持ちの衰えはまるでない。館山の復活こそ、ヤクルト浮上の大きな要因となるだろう。
昨シーズン、若手有望株の岡本和真とのポジション争いを制した村田修一(巨人)。全試合に出場し、打率.302、25本塁打、81打点とかつての輝きを取り戻した。
しかし、その村田も再び試練に見舞われている。メジャーリーグと日本で実績を残した新加入のマギーと三塁を争うことになるからだ。三塁でなければ一塁に就く可能性はあるが、一塁には阿部慎之助がいる。村田、マギー、阿部によるレギュラー争いは白熱するだろう。
昨シーズンのセ・リーグ覇者の広島の「松坂世代」では、チーム歴代最多セーブ記録の保持者・永川勝浩、2010年の盗塁王・梵英心が崖っぷちに立たされている。2人とも昨シーズンの優勝にほぼ貢献できなかった。今シーズンも低調に終わるようなら、オフには厳しい現実が待ち構えている可能性が高い。奮起に期待したい!
ここで挙げた選手以外にも、和田毅(ソフトバンク)や、杉内俊哉(巨人)といったビッグネームが揃う「松坂世代」。球界を席巻した彼らの力をもう1度見せて欲しい。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)