金本監督が監督就任早々、「右の和製大砲として期待している」と名指しでコメントしたのが江越だった。
しかし、春季キャンプでは成長の跡を示すことができず、オープン戦途中で掛布雅之2軍監督の元に強制送還された。
開幕にはベンチ入りしたものの、キャンプ、オープン戦と首脳陣の予想をいい意味で裏切った横田にスタメンの座を譲り、江越は悔しい思いをしていたはずだ。
昨季はルーキーイヤーながら、56試合に出場。打率.214と思うような結果が残せず、打ちたい一心からボールゾーンの球に手を出すことが多かった。
しかしストライクゾーンの球には、打率.327、5本塁打と、打つべき球はしっかり仕留めていた。
「狙った球は逃さない」
江越は自らが仕留められるゾーンに来た球を上手く捉え、代打起用から数えて3打席連続本塁打、出場した試合では4試合連続本塁打を記録。4月10日から、クリーンナップの3番を任されるまでに成長している。14日のDeNA戦では、駒澤大学の後輩・今永昇太から決勝二塁打を放ったことは、記憶に新しい。
「もっと強く振り切れ!」
ベンチから金本監督が、かなり厳しい表情で打席に向かう横田に身振り手振りで指示を出す。
横田は開幕から首脳陣の期待に応え、時には暴走しつつも、ダイヤモンドを駆け巡り、開幕からの快進撃の一役を担ってきた。
攻撃的2番打者を任され、打ち損じても俊足を生かした内野安打で出塁し、盗塁を仕掛けてバッテリーにプレッシャーをかけてきた。
しかし、金本監督は言う。
「2番という打順を意識するあまり、つなぎの気持ちが働き大きく振ることをためらわせているのでは?」
元々、長距離砲として期待されていた横田。糸井嘉男(オリックス)級のポテンシャルを秘める、次代の主砲候補であることは間違いない。背筋力や跳躍力などの身体能力は、プロ野球選手のなかでも群を抜いている。
そのためか、上体だけで当てにいった打球でも、勢いよく野手の間を抜けヒットになるため、1軍投手の制球力ある変化球に合わせにいってしまい、本来の自分の形を崩されていた。
金本監督にしても、開幕から使い続けた横田を調子のいい江越に切り替えるのは苦渋の決断だったに違いない。
開幕から不動の1番を譲らない高山俊を含め、若手の競争なくして阪神タイガースの超変革は完結しない。
「育成しながら“勝つ!”」
スタメンの座を江越に奪われた横田。しかし、前述した14日のDeNA戦では、ライバルに負けじと追撃の適時打を放っている。
もっとも難しい課題がクリアされることが、今年の阪神が頂点を極める絶対条件となりそうである。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。