10月に入り、そろそろプロ志望届の提出期限を迎える。9月中にはプロ志望届の提出が必要な高校生・大学生の一覧がほぼ固まった。
9月25日に清宮幸太郎(早稲田実)がプロ志望届を提出し、社会的な話題になったが、高校生や大学生にとってはプロ志望届は極めて大きな意味を持つ。
特にドラフト当落線上の選手は「背水の陣」を敷くことになる。それは多くの野球名門大学が「プロ志望届を出した選手は獲得しない」方針を貫いているからだ。社会人も同様の内規があるチームは少なくない。
清宮のような指名確実の選手なら問題はないが、当落線上の選手は「○○大学から話があるけれど、プロにも行きたい」と頭を悩ませることになる。その結果、大学に進学して、4年後のドラフトを目指す選手も少なくないのだ。
だからこそ、プロ志望届を出す下位候補には「ハングリー精神」が宿る。もちろん、指名漏れのあとに受け入れる大学・社会人もあるが、退路を断ってドラフトに挑むからこそドラマが生まれる。
大学進学や社会人入り選択をした選手も「逃げ」ではない。将来の自分を信じてレベルアップしなければ、プロへの道は拓けない。高校時代はドラフト上位候補でも大学で不振に陥り、プロを逃す選手は多い。
ドラフトでの指名も楽しみだが、プロ志望届を出さなかった選手の進路や指名漏れの選手の進路も楽しみだ。どういう選択をしたのか、その先での活躍はどうなのか、来春にも「ドラフト」の楽しみはある。
当然、プロのスカウト陣も進学か否かの動向には敏感だ。春から夏にかけて進学が決まる選手もいるが、明らかに視察が少なくなる。この選手は有力候補なのにスカウトが少ないな、と思ったら関係者から「○○大学進学が決まった」と聞かされることもある。ドラフトは10月だが、駆け引きは春先から始まっているのだ。
春季大会あたりからスカウトの動向や実力と注目度の差など、気を配れば配るほど、ドラフト協奏曲を感じることができる。様々な「駆け引き」を感じ取れるようになれば、2018年のドラフトはもっと面白く見られるはずだ!
文=落合初春(おちあい・もとはる)