第1回WBCでは松坂大輔(現ソフトバンク)と和田一浩(引退)の2人が選出された。
ただ、和田は尿管結石を患ったため、チームには帯同したものの出場は1次リーグでの代打起用だけ。結果も2試合で2打数無安打とサッパリだった。
一方、松坂は1次リーグのチャイニーズ・タイペイ戦、2次リーグのメキシコ戦、決勝のキューバ戦に登板し、それぞれ4回1失点、5回無失点、4回1失点。すべての試合で勝ち投手になる活躍を見せた。
大会MVPに選ばれた松坂はチームとともに世界一の称号を手に入れ、メジャーリーグ挑戦の足がかりとした。
続いては2008年の北京五輪。星野仙一監督(現楽天球団副会長)率いる“星野JAPAN”には、涌井秀章(現ロッテ)、中島裕之(現宏之、オリックス)、G.G.佐藤こと佐藤隆彦(引退)が参加した。
台湾戦と中国戦に先発し、2勝を挙げた涌井。主に遊撃手として9試合に出場し、打率3割弱と健闘した中島。と、ここまではよかったのだが……、シーズンの好調さを買われて追加招集されたG.G.佐藤がやらかしてしまう。
準決勝の韓国戦、3位決定戦のアメリカ戦といった大一番で失点につながるエラーを連発。西武では主に右翼を務めていただけに、慣れない左翼での失策という情状酌量の余地はあるが、あえなくメダルを逃す敗戦の戦犯になってしまった。
西武ファンとしては肩身が狭かった……。
北京五輪で世界一を逃した日本。その翌年に開催された第2回WBCでは、再び頂点を奪回すべくメンバーが集められ、西武からは涌井、中島の北京五輪組に加え、片岡易之(引退)が新たに日の丸を背負うことに。
涌井は北京五輪では先発だったが、この大会では救援として3試合に登板。3回1/3を1失点に抑え、白星も1つ挙げた。
北京五輪では下位打線を打つことがほとんどだった中島は、「2番・遊撃」に固定され、打率.364で出塁率に至っては.516と大爆発。国際大会でこれだけの成績を残せたのなら、後にメジャーに挑む気持ちになったのも無理はないと思える。
そして第3の男・片岡も、代走や三塁守備といった試合ごとに変わる役割をしっかりとこなし、大会を通じて4盗塁を决めるなど、自分の持ち味を出し切った。
ちなみに西武OBの松坂(当時レッドソックス)は2大会連続でMVPを獲得。西武の選手・OB全員で優勝に貢献し、G.G.佐藤の悪夢を振り払った。
五輪の競技種目から野球が外れたことで、2013年当時のトップチームの世界大会はWBCのみとなった。
そのため第3回WBCは「何が何でも3連覇」をという機運が高まり、西武からは常連の涌井のほか、炭谷銀仁朗、牧田和久が世界一獲得の使者として送り込まれた。
炭谷こそ阿部慎之助(巨人)のバックアップ的な扱いだったが、涌井が救援で4試合、牧田も救援で3試合を投げ、いずれも大会通じて無失点で切り抜ける力投を披露。
チームは準決勝で敗退したものの、西武の選手たちは与えられた役割をしっかりとこなした。優勝を逃したのは残念だったが。西武ファンとしては、ある意味、ホッとする結果だった。
第3回WBCの2年後となる2015年、野球の新たな世界大会・プレミア12が行われ、侍ジャパンは小久保裕紀監督を中心に2017年の第4回WBCも見据えた戦いに挑んだ。
西武からは第2回WBCで名を上げた牧田、西武が誇るホームランアーティスト・中村剛也、イチロー(マーリンズ)のシーズン安打記録を更新した秋山翔吾、そして炭谷が名を連ねた。
注目はやはり秋山で、予選ラウンドの初戦から3位決定戦まで常に「1番・中堅」で出場。8試合中4試合でマルチ安打を放つなど、日本の安打製造機の技を世界に見せつけた。
今年開催された第4回WBCでは、プレミア12の選出メンバーから中村以外の3人が派遣され、世界一奪還を目指して戦った。
炭谷には小林誠司(巨人)、秋山には青木宣親(メッツ)というライバルがいたため、なかなか出場機会に恵まれなかったが、そんななかでも秋山は打率3割を超える奮闘を見せた。
牧田はチームで3番目に多い5試合に登板。イスラエル戦でよもやの失点を喫したが、2次ラウンドのオランダ戦など要所は抑えて1勝2セーブと活躍した。
世界的にも珍しいアンダースローだけに、初対戦の打者は対応するのが難しい。そういった利点はあるものの、この活躍でより自信を深めた牧田は、メジャー挑戦へ意欲を見せている。西武ファンとしては嬉しさ半分、さびしさ半分。複雑である……。
あらためて振り返ると、どの世界大会でも西武勢は見せ場を作ってきた(G.G.佐藤は残念な目立ち方だったが……)。昨季までの数年間、西武は不振だったとはいえ、個々の力はあるということが再確認できた。
「アジア プロ野球チャンピオンシップ2017」に選出された6人のうち、2021年のWBCには果たして何人出場できるか、早くも気になってしまう。
「アジア プロ野球チャンピオンシップ2017」に選ばれなかった選手も、慌てず焦らずじっくりタイミングよく飛躍して、また、ファンに「新たな思い出」を残してほしい。
文=森田真悟(もりた・しんご)