大いなるポテンシャルを秘めながらも、なかなかブレイクしきれない選手というのは、どこの球団にもいる。同時に「今季こそ覚醒してもらわないと困る!」「チームを担う存在に育ってほしい!」と、切なる期待を集めながら、首脳陣とファンをやきもきさせる選手がいる。
その代表格だったのが高橋周平(中日)。ここ1、2年、期待に応えて大きく飛躍し、中日ファンをひと安心させた。
今季こそ、高橋のようにチームの看板になってほしい、いや、ならないといけない選手、言わば「わがチームの高橋周平的」な選手たちをピックアップしてみた。
活躍している間はいいが、スランプに突入しようものなら、なにわ名物「手のひら返し」のバッシングが始まってしまう。それだけメディアやファンに愛情深く見守られている証ではあるが、とにかく生半可なメンタルでは務まらないのが阪神の4番だ。
今季、そんな重責を開幕から全試合で担っているのが大山悠輔だ。ここまでの成績は、打率.263、7本塁打、26打点(本塁打と打点はチームトップ)。これを143試合に換算すれば(打率は除き)、24本塁打、91打点となる。
大卒3年目の野手として見ればまずまず悪くない成績だが、4番と考えればやはり物足りない。とくに、得点圏打率.259は残念な数字だ。勝負強さを磨いて、熱狂的な虎党も納得の4番に成長することを期待したい。
前橋育英の2年時には、エースとして夏の甲子園を制覇した高橋光成(西武)。2014年のドラフト1位入団で、1年目に5勝。さらなる期待が高まったが、2年目以降は4勝11敗、3勝4敗、2勝1敗と、肩を痛めたこともあって、満足な成績を残せていない。今季も、ローテーションは守っているものの、3勝4敗と負け越しているのが現状だ。
今季は5年目ということで、大卒ルーキーと同年齢となる。同じパ・リーグの投手で言えばセットアッパーとして早くも頭角を現しつつある甲斐野央や泉圭輔(ともにソフトバンク)、初登板・初先発で勝利投手となったチームメイトの松本航らが同学年。いつまでも若手と甘えてはいられない。
元旦には入籍を済ませた。自主トレは菊池雄星(今季からシアトル・マリナーズに移籍)と行い、みっちり鍛え上げた身体は7キロ増量。本人も変わらなければいけないという自覚は十分すぎるほど胸に秘めているはず。結果がほしい。
ルーキーイヤーだった2014年、開幕戦で4番に抜擢され華々しいプロデビューを飾った井上晴哉だったが、しばらくの間、目立ったのはその一瞬だけ。以後は伸び悩み、2017年までの4年間で111試合の出場、本塁打も4本とパワフルな打撃は影を潜めてきた。
転機となったのは井口資仁監督が新たにチームを率いるようになった2017年。あらためて開幕4番に座ると、そのままレギュラーとしてシーズンを完走。打率.292、24本塁打、99打点と、5年目にしてようやく本領を発揮した。
ところが、中軸として期待されていた今季は、前年の活躍が嘘のような開幕からの大不振。4月5日までの7試合で、23打数1安打(打率.043)。首脳陣もさすがに我慢できず、2軍落ちとなってしまった。
2軍では10試合に出場し、打率.343とさすがの数字で、4月23日には1軍に再昇格。そこから5月16日までの19試合で、71打数25安打と立て直しに成功している。このまま好調をキープできれば、チームへの貢献度も日に日に高まってくるはず。レアードの加入で打線の厚みが増した今季のロッテ。チームの看板として、そこに井上の名前は欠かせない。
走攻守で甲子園を沸かせ、ドラフト1位で楽天に入団したオコエ瑠偉も、今季が4年目。ルーキーイヤーだった2016年から2018年まで、毎年40〜50試合程度は出場しているが、度重なる故障もあってシーズンを通して1軍に定着できていない。
課題は、やはり打撃。デビュー年から打率は.185、.300、.198で、今季は.171。2017年はキャンプで痛めた指のケガが長引き夏場からの出場だったが、3割を記録しているように、潜在能力は証明済み。あとは安定感だろう。
走力や守備には光るものがあるので、打力をワンランク上げられれば、チームの看板選手となるスケール感はある。圧倒的な身体能力を武器に甲子園を縦横無尽に駆け回っていたあの頃のような、野性味あふれるオコエのプレーを心待ちにしているファンは多いはずだ。
(※成績は5月16日現在)
文=藤山剣(ふじやま・けん)