7月の声を聞く前から関東地方では梅雨明けが宣言されるなど、すでに全国的に本格的な夏が始まりつつある。この季節になるとプロ野球ではオールスターゲームが開催され、高校野球では甲子園の地方大会がスタートする。そして、東京ドームでは、社会人野球における2大大会のひとつ、都市対抗野球(以下、都市対抗)が開催される。
社会人野球のビッグイベントである都市対抗は、多くのドラフト候補が登場することもあり、プロのスカウトをはじめ野球ファンにとっても注目度の高い大会だ。
近年では源田壮亮(トヨタ自動車→西武)、山岡泰輔(東京ガス→オリックス)、田嶋大樹(JR東日本→オリックス)らが出場している。過去には現在、阪神で主将を務める福留孝介(日本生命→中日)や谷佳知(三菱自動車岡崎→元オリックスほか)などのスター選手が結果を残し、プロ入りをつかんだ。
しかし、都市対抗の見どころは選手のプレーだけではない。都市対抗には応援合戦やマスコットガールといった社会人野球ならではの楽しみもあるのだ。今回は会社とチームの誇りをかけて熱く繰り広げられる応援にスポットを当てたい。
都市対抗の華として親しまれている応援合戦は「応援団コンクール」と呼ばれている。1963年に開催された第34回大会から最優秀賞、優秀賞、敢闘賞、努力賞、特別賞が選出されており、その歴史は50年を超えている(該当なしの年度もあり)。
2017年の受賞チームは下記の通りだ。
■第88回都市対抗野球・応援団コンクール
最優秀賞:NTT東日本
優秀賞:東芝
敢闘賞:JR西日本
特別賞:該当なし
努力賞:該当なし
社会人野球は企業と企業の戦いではあるものの、ルーツは各都市にある。そのため郷土の祭りさながらの応援をする企業もあり、その見せ方は様々だ。
プロ野球の応援団が外野席に陣取っていることはよく知られているが、都市対抗の応援は内野席に約25メートルの特設ステージを作り、そこでパフォーマンスを行うことになっている。ステージがあることでチアリーダーらが激しい動きをみせ、応援席を盛り上げるのだ。また、団員が団旗を持って右へ左へと動き回ることもある。
このように様々な形で一体感を生み出すのだ。
また、都市対抗は平日の昼間にも試合が行われているにもかかわらず、応援席は埋まっていることが多い。各企業の社員が応援に駆けつけているからだ。業務として応援に駆けつける企業もあれば、自由参加の企業もある。日帰りが困難な地方企業では交通費、宿泊費を補助する企業もあるという。
対応は各企業によってまちまちだが、いずれも応援に重きを置いている。
応援を盛り上げる大きな存在としてチアリーディングがある。チアリーダーは社員のこともあれば、大学の応援団と提携している企業もある。なかにはNBAでパフォーマンスを行っているプロのチアダンサーに依頼する企業もあり、やはり取り組み方は様々だ。
そしてもうひとつ。都市対抗に欠かせないのがマスコットガールだ。マスコットガールは、各企業につき1名をベンチ入りさせることが許されている。テレビ中継などでベンチ内が映し出されたときに、女性が映り込むのはそういうわけなのだ。
マスコットガールの役割はマネージャーと違い、スコアをつけることなどではない。文字通り、勝利の女神としてマスコット的な役割を担うのだ。選手が本塁打を打った際に、ホームベース付近でぬいぐるみを渡す女性、と言えばわかりやすいかもしれない。最近では、「◯◯のチームの◯◯さんがかわいい!」とSNSなどで話題になることもある。
ただ、「マスコットガール」という名称がついているものの、女性限定ではなく男性や着ぐるみでも構わない。ここも各企業によって対応が異なっている。
今回紹介したように都市対抗はプロ野球とは違う応援方式をとっている。ドラフト候補を見るだけでなく、各企業の色や応援パフォーマンス、そして輝く女性などに目を向けてみるのも楽しみ方のひとつだ。ぜひ、注目してほしい。
文=勝田聡(かつた・さとし)