1991年のドラフト4位でオリックスに入団したイチローは、3年目となる1994年に当時のシーズン最多安打記録となる210安打を達成。そこから大ブレイクし、1999年まで6年連続首位打者、ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞と圧倒的な存在感を見せ、9年目となる2000年のシーズンを迎えている。
高卒9年目のこのシーズン、イチローはさらに好成績を残した。シーズン半ばまで4割近い高打率を維持。8月後半に脇腹を痛めた影響で最終盤を欠場となったが、打率.387で7年連続の首位打者を獲得。ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞にも7年連続で輝き、日本の頂点に立ったままオフにマリナーズへと移籍した。
イチローと筒香は打者としてのタイプが違う。共通点は右投げ左打ちの外野手という点くらいかもしれない。しかし、筒香が圧倒的なスターになるためには、イチローのように他を寄せつけない成績が必要だ。筒香はイチローのような存在感を発揮することができるだろうか。
■イチローの高卒9年目の成績(オリックス、2000年)
105試合:打率.387(395打数153安打)/12本塁打/73打点
タイトル:首位打者、最高出塁率
表彰:ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞
一方で松井の9年目の成績はどうだったのか。松井は1992年のドラフトで長嶋茂雄監督が当たりくじを引き当て、巨人に1位入団。高卒1年目の1993年から2ケタ本塁打(11本塁打)を放ち、2年目には開幕スタメン出場。早くも星稜高時代に見せた甲子園での「スター感」がプロの世界でも解き放たれつつあった。大きなケガもなく8年目の2000年には42本塁打、108打点で本塁打王と打点王の二冠を獲得。さらなる高みを目指して高卒9年目となる2001年に臨んだ。
このシーズンも前年同様に、ペタジーニ(ヤクルト)と激しいタイトル争いを繰り広げる。惜しくも本塁打、打点の二冠は譲ったものの、打率.333で自身初の首位打者を獲得。また、プロ入り以来、初めて全試合で4番に座った。そして、翌2002年の50本塁打を置き土産にヤンキースへと移籍した。
筒香がレギュラーに定着したのは、ケガの影響もあり松井よりも遅い高卒5年目だ。単純に比較できないものの、長距離砲として同様の成績を残せるポテンシャルはあるだろう。野球ファンの多くはさらなる覚醒を望んでいるはずだ。
■松井秀喜の高卒9年目の成績(巨人、2001年)
140試合:打率.333(481打数160安打)/36本/104打点
タイトル:首位打者
表彰:ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞
筒香は派手なタイプではなく、どちらかというと「侍」といったイメージが似合う。もしかしたら、「スター」と呼ばれる華やかなタイプではないかもしれない。しかし、観客動員は伸びたものの野球人口の低下などの遠因もあり、低迷が囁かれる野球人気に歯止めを掛けるためにも、国民的な人気選手になってほしい。
また、公の場でメジャー志望を打ち出していないが、イチローや松井のように日本中の誰もが認めるスターとなり、キャプテンとしてチームを優勝に導いた後に、胸中を打ち明けてくれるかもしれない。将来的なメジャーリーグ移籍にも期待したいところだ。そのためには、先人の2人のように高卒9年目を迎える2018年シーズンにさらなる飛躍を遂げてほしい。
文=勝田聡(かつた・さとし)