真っ先に挙げられる要因は侍ジャパンメンバーの帰還だろう。
菅野智之はWBC準決勝に登板したため、負担を考慮して開幕投手を回避することになったが、坂本と小林誠司はオープン戦の最終試合から出場するなどペナントレースへの意欲を見せた。
プロ野球界随一の遊撃手と、日本を代表するまでに成長した捕手がいるといないとではチーム状況が大きく変わるのは明白だ。
特に坂本はオープン戦でも安打を放つなど、「WBCロス」などないところを見せ、見事に開幕戦の3打数2安打、1本塁打という結果につなげた。
小林も、中日打線を初戦から2点、2点、3点に抑える好リードを披露。昨季までは「ほかに使える捕手がいないから試合に出ているだけ」とチームの首脳陣から厳しいことを言われていたが、誰もが舌を巻くほどの急成長を遂げた。
V9時代の巨人しかり、森祇晶監督時代の西武しかり、黄金時代を築くチームには必ず名捕手が守備の要として存在していた。もしかすると今季が由伸巨人の黄金期元年になるかもしれない。
2つ目には、その高橋由伸監督の采配がズバリと的中していることが挙げられる。
開幕2戦目では、9回裏に送った代打・村田修一が阿部慎之助の逆転サヨナラ弾につながる安打を放って勝利に貢献。
また3試合目では、実戦で育てたい岡本に代えて亀井義行を打席に送る。すると亀井も2点タイムリー二塁打で期待に応えた。勝利を引き寄せ、岡本に刺激も与える一石二鳥の一打となった。
村田に亀井。他球団ならまだまだレギュラーで試合に出場できる選手だけに、彼らを代打で使える戦力の充実ぶりは恵まれている。
しかし、勝負どころを見極めての起用、采配は監督の力量によるところが大きい。昨季、監督1年目で得た経験が、しっかりと生かされていることが伝わってくる代打攻勢だった。
ここまでは打線の話になったが、中日打線を3試合で7点に封じた投手陣にも触れないわけにはいかない。
マイコラスが7回まで投げて、マシソンとカミネロで締めた開幕戦。大竹寛が6回途中まで投げて、森福允彦、マシソン、カミネロとリレーした3戦目。まさに鉄壁。盤石のブルペンだ。
また、大きな収穫もあった。2点リードされて終盤に入った2戦目、先発の田口麗斗からバトンを受けた谷岡竜平、池田駿のルーキーコンビが、6回、7回、8回をゼロでしのいでみせた。
チームはその間に1点を返し流れを引き寄せると、9回表を山口鉄也が1安打を許しながらも粘りの投球で抑えたことで、阿部の逆転サヨナラ弾という結末を呼び込んだ。
村田の代打的中もさることながら、その裏では投手陣がアッパレというほかない好投で支えている。
投打の歯車がガッチリと噛み合い、強さを見せつけた巨人。
この好調ぶりを「最初だけ」と見るかどうか。ライバルチームが、四球のタイ記録を作るような締まらない試合をしているようだと、盟主・巨人がほかを引き離すのは時間の問題だ。
セ・リーグの火は早々に消えるのか。それとも熱く燃え上がるのか。早くもペナントレースの山場が訪れているのかもしれない。
文=森田真悟(もりた・しんご)