30歳で開幕を迎えた今年も置かれた立場は厳しかった。オコエ瑠偉、福田将儀など新戦力の入団や若手の台頭、昨年不振だった岡島豪郎の復活、梨田昌孝監督による松井稼頭央開幕センター構想などもあり、楽天の外野は例年に増して激戦区になったからだ。限られた出場機会になったオープン戦では十分なアピールができずに終わる。しかし、開幕後に巡ってきたチャンスを一気につかみ取った。
転機は今季初スタメンの4月2日・西武戦だ。その数日前、センターで出場を続けてきた松井稼頭央が右膝を痛めた。その代役で起用され、この試合で放った今季初安打が決勝点を叩き出すタイムリーになった。
以降、スタメンが増え、センターの「聖域」をみごとに奪還した。複数安打は8試合を数え、猛打賞はチーム2位の4試合。5月1日現在、81打席で打率.357は、パ・リーグ50打席以上の打者55人中1位と「隠れ首位打者」である。規定打席には少し足りないが、このままの状態を維持できれば近いうちに打率ランキングのトップへ一気に踊り出る可能性は高い。
年明けに母校・國學院大で恩師・竹田利秋氏に師事を仰いだ打撃フォームの修正が奏功している。従来は空振り率が10%を超え、ここ3年は全打席に占める三振の割合が20%と多く、もろさも目立った。
しかし今年は球を引きつけてから打ち返すスタイルでその弱点を克服しつつある。空振り率は5.8%。三振率は11.1%と大きく改善され、2ストライク以降の打率も.333と高い。最近は攻撃の起点を担うケースが増えている。
長野市の駅前に「牛たん柱」というスポーツ酒場がある。仙台と信州名物に舌鼓を打つことができるバーは、聖澤が経営に携わる。店名はチームの「柱」を担いたいという決意で2013年開幕前に色紙に書き記した一字からきている。通算200盗塁にあと5と迫った背番号23が往時の輝きを取り戻し、チームの「柱」として梨田楽天を支えることを期待したい。
文=柴川友次(しばかわ・ゆうじ)
信州在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える、楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴、現在地を定点観測するブログを2009年から運営の傍ら、有料メルマガやネットメディアにも寄稿。