第1回、「遅咲きの本格派右腕を目撃!」
第2回、「大学2勝止まりも開花間近」
大学時代は通算わずか2勝、プロ志望届を出しても指名すらなかった右腕・石山泰稚(ヤマハ)。東海の名門・ヤマハで2年間腕を磨き、ドラフト1位指名を受けるまでの存在になった。しかし、社会人で急激に成長したわけではないと本人は言う。ここまで地道に努力を重ね、見る者を惚れ惚れさせるフォームを作ってきた男の足跡を辿った。
2年目の石山は快調に飛ばす。4月のJABA静岡大会では日本通運を被安打4で完封すると、JABA京都大会では三菱重工神戸相手に、またもや完封。都市対抗予選までの公式戦は19回を投げて防御率0・00という抜群の安定感を誇った。徐々にスカウトの評価が上がってきたのもこの頃だ。
「1年目から投げさせてもらって、多くの経験もできました。自分では納得いかないピッチングもありましたが、そのなかでも課題ができて。その克服というか、自分の足りないところを考えながら練習できたことが2年目につながったと思います」
下半身を強化したことにより、コントロールが安定。140キロ台中盤のストレートはキレが増し、カーブとのコンビネーションで相手を翻弄した。
都市対抗予選ではエースを任されると、チームは敗者復活トーナメントから勝ち上がり、9年連続で本大会出場を果たした。
その後、都市対抗の本大会では初戦の先発を任され、秋の日本選手権の予選では先発、リリーフと大車輪の活躍でチームを支えた。
そして、10月25日、ついにドラフト会議で念願の指名を受ける。しかも、1位という最高の評価で。
「実績は、あまり残していないのですが、自分では伸びしろに目をつけてくれたのかなと思っています。即戦力とは言われますけど、まだまだ自分の中では伸びると思います。まずは体を作り、そこから1軍に上がりたい。無理をしてすぐにケガをしたら、獲ってもらった球団に申し訳ないです。やっぱり、長くプロの世界で活躍したいっていう気持ちが強いですね」
一方で前述の八重樫スカウトは1年目からの活躍を期待する。
「大学時代より体が一回り大きくなったし、一発勝負の社会人野球で揉まれたことが成長につながったんでしょう。今年のウチでは、大学、社会人の中でナンバーワンの評価でしたから。だからこそ、キャンプからどんどんアピールしてほしい。1年目から投げてもらわないと困るよね」
果たして、石山は今後、どんな野球人生を歩むのか。これまで歩んできた道から一つ言えるのは、急激に成長した時期というのはない。高校、大学、社会人と各カテゴリーで高いレベルに挑み、苦労しながらも、一歩ずつ順応してきた。コツコツと少しずつ前進。
「そのペースを崩したらダメだと思うので」
東北人らしい忍耐強さを武器にプロに挑む。
(※本稿は2012年11月発売『野球太郎No.002 2012ドラフト総決算プレミアム特集号』に掲載された「26選手の野球人生ドキュメント 野球太郎ストーリーズ」から、ライター・栗山司氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。)