ローテーションの軸を担っていた黒田博樹が引退。先発陣の弱体化が懸念されるなか、若手の台頭は急務といえる。そこで期待したいのは、今シーズン、3年目を迎える左腕・塹江敦哉だ。
塹江の最大の魅力は左腕から繰り出す150キロ超のストレート。広島の長年の夢である和製左腕エース誕生への期待は大きい。
昨シーズンの9月11日、塹江は巨人戦で念願の1軍デビューを果たした。しかし、これでもかというほどプロの洗礼を浴びせられてしまう。
7回裏に3番手でマウンドに登った塹江は、記念すべき1軍デビューの初球を長野久義にいきなりスタンドに運ばれると、その後も打ち込まれ6失点。1死を取るのがやっとで無念の降板。苦すぎるデビュー戦となってしまった。
1回を1死のみで6失点。防御率は162.00という目も当てられないものとなった。しかし、この防御率を見て、昔からの野球ファンの方はピンときたのではないだろうか。そう、この防御率は、広島のレジェンドOB・大野豊氏のそれとよく似ているのだ。
大野氏も、デビュー戦では1死を取ったのみの5失点で降板している。そのときの防御率は、135.00という散々なものだった。
この大野氏と塹江は、デビュー戦でのKOのほかにも、同じ左投手で速球派という点が共通している。
苦いデビューを乗り越え、球史に名を残す投手に成り上がった大野氏。塹江にも同じような成長曲線を描いてほしい。そう願う広島ファンは数知れずいる。
そして、塹江には期待に応え得るだけの力がある。1軍での登板3試合目には先発を経験。DeNAの強力打線を5回2失点に抑える力投。また、7月14日のフレッシュオールスターゲームでは自己最速の159キロを計測。大器の片鱗をみせつけた。
広島待望の和製左腕エースの誕生に期待せずにはいられない。
打者にも期待の若手は多くいる。なかでも、「大砲」というロマンをかき立てるのが、今シーズン、5年目を迎える美間優槻だ。
美間の魅力は、どっしりとしたスラッガー体型から放たれる長打。2015年のオープン戦で放った特大のホームランが、いまだに目に焼きついているファンも少なからずいることだろう。
美間を見ていると、広島の往年のスラッガー・江藤智氏を思い出すのは筆者だけだろうか?
右打者、三塁手、スラッガー、高卒ドラフト5位、90キロを超える体型、高校時代に投手をしていた経歴(江藤は高校2年まで)。これらの共通点に加え、美間のバットを下にして振る打席での動作がどことなく江藤氏と似てみえる。
江藤氏はプロ5年目に本塁打王のタイトルを獲得している。今はレギュラーの厚い壁にぶつかって2軍で鍛錬している美間だが、その壁を突き破れば江藤氏のようなスラッガーになれるはず。5年目の今シーズンは、大器の覚醒を大いに期待したい。
塹江、美間以外にも、未完の大器・堂林翔太や、昨シーズン終盤に輝きをみせた野間峻祥も、今シーズンの覚醒に期待したい選手だ。
起用法も含めて、堂林も野間もファンからの厳しい視線に晒されてきた。優勝したことで、ファンの目が穏やかになった今こそ、のびのびとプレーできるはず。今年こそ彼らの爆発はあると信じたい。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)