今年もいろいろあったプロ野球。セ・リーグでは7月3日、全6球団が借金生活になるという史上初の珍事が起きて話題となった。また、DeNAが演じた「前半戦首位ターンにもかかわらず最下位フィニッシュ」も史上初の出来事。よくも悪くも「史上初」が数多く生まれたシーズンだった。
そこで今回は、今年の各タイトルホルダーを巡る「史上初」な出来事を一挙紹介。「史上初」が多かったというのは「ニュースターが誕生した」ことの証左でもある。新たなフェーズに移行しつつある日本球界の姿も見えてくるはずだ。
今年の最多セーブは、セ・リーグではバーネット(ヤクルト)と呉昇桓(阪神)がともに41セーブでW受賞。パ・リーグはサファテ(ソフトバンク)が41セーブで受賞した。
セーブ数で争う現行スタイルになった2005年以降、両リーグのセーブ王がともに40セーブ以上だったのは史上初めて。また、40セーブ以上が2人、というのは過去にもあったが(※2007年:藤川球児が46S、岩瀬仁紀が43S)、「1シーズンに3人」というのも史上初だった。
セ・リーグの首位打者は川端慎吾で打率.336、本塁打王は山田哲人で38本、打点王は畠山和洋で105打点。いわずと知れた東京ヤクルトスワーローズの面々だ。
首位打者、本塁打王、打点王の打撃三冠を同一チームの別選手で達成したのは史上初の珍事。世間では「バラバラ三冠王」とも称されている。史上稀に見る混戦だったセ・リーグだが、最終的にヤクルトが抜けだしたのもこれなら納得だ。
日本シリーズでの「史上初! 同一試合での3打席連続弾」も記憶に新しい山田哲人。今季のペナントレースではトリプルスリー(打率.329、38本塁打、34盗塁)を達成。本塁打王と盗塁王にも輝くという、まさに球史に輝く成績で一躍スーパースターの仲間入りを果たした。
山田とともに、パ・リーグでもソフトバンクの柳田悠岐がトリプルスリー(打率.363、34本塁打、32盗塁)を達成。セ・パ両リーグで同時にトリプルスリーが生まれたのは、1950年の岩本義行(松竹)と別当薫(毎日)以来、史上二度目のことだ。
そして、トリプルスリー達成者の首位打者獲得は史上初の出来事。打率.363は歴代トリプルスリー達成者の中でも群を抜く好成績だった。ちなみに、盗塁数はトップにわずか2つ及ばずの2位。シーズン終盤、ケガで欠場や代打起用が増えたことが今となっては悔やまれる。
今年のパ・リーグ盗塁王は日本ハムの中島卓也で34盗塁。2位の柳田悠岐が32盗塁、3位はチームメイトの西川遥輝で30盗塁。接戦を制しての初の盗塁王獲得となった。
今季は3位に甘んじた西川遥輝だが、昨季は43盗塁で盗塁王。さらにさかのぼれば、2013年の盗塁王はこれまた日本ハムの陽岱鋼(47盗塁)。つまり、日本ハムから3年連続で異なる選手が盗塁王を獲得したことになる。これは史上初の出来事だ。
ちなみに、今季の盗塁ランキング4位には日本ハムの新鋭、岡大海がつけている。来季、この岡が「4人目の刺客」として盗塁王争いに加わり、「4年連続で別選手が……」となっていると実に面白い。来季の活躍に向け、各選手には秋季キャンプ、その後の自主トレと例年以上に精を出し、更なるレベルアップを期待したい。
文=オグマナオト(おぐま・なおと)