今回の代表メンバーで、特に不安視されているのが「サウスポーが少ない」ということ。実際に過去3大会と比較してみよう。
■2017WBC:3人
宮西尚生(日本ハム)/松井裕樹(楽天)/岡田俊哉(中日)
■2013WBC:6人
能見篤史(阪神)/杉内俊哉(巨人)/森福允彦(ソフトバンク)/内海哲也(巨人)/大隣憲司(ソフトバンク)/山口鉄也(巨人)
■2009WBC:4人
内海哲也(巨人)/岩田稔(阪神)/山口鉄也(巨人)/杉内俊哉(ソフトバンク)
■2006WBC:4人
藤田宗一(ロッテ)/和田毅(ソフトバンク)/杉内俊哉(ソフトバンク)/石井弘寿(ヤクルト)
ご覧のように、今大会の左腕投手は過去もっとも少ない。だが、それ以上に気になるのが「役割」だ。過去3大会は先発、抑え候補それぞれに左腕を用意していたわけだが、今回選ばれた選手はいずれも中継ぎ・抑え投手たち。バランスが悪い、と受け取られて仕方がないだろう。
左腕不足も心配だが、実は左打者も少ないのが今回のチームだ。過去3大会と比較してみよう。なお、野手登録の選手のみで換算し、スイッチヒッターも左打者の数に含めている。
■2017WBC:4人
田中広輔(広島)/筒香嘉智(DeNA)/秋山翔吾(西武)/青木宣親(アストロズ)(※大谷翔平を含めれば5人)
■2013WBC:7人
阿部慎之助(巨人)/鳥谷敬(阪神)/松井稼頭央(楽天)/稲葉篤紀(日本ハム)/本多雄一(ソフトバンク)/糸井嘉男(オリックス)/角中勝也(ロッテ)
■2009WBC:9人
阿部慎之助(巨人)/岩村明憲(レイズ)/小笠原道大(巨人)/川崎宗則(ソフトバンク)/福留孝介(カブス)/青木宣親(ヤクルト)/亀井義行(巨人、現在の登録名は亀井善行)/稲葉篤紀(日本ハム)/イチロー(マリナーズ)
■2006WBC:9人
岩村明憲(ヤクルト)/小笠原道大(日本ハム)/松中信彦(ソフトバンク)/西岡剛(ロッテ)/川崎宗則(ソフトバンク)/金城龍彦(横浜)/福留孝介(中日)/青木宣親(ヤクルト)/イチロー(マリナーズ)
優勝した2006WBC、2009WBCの代表チームと比較して、左打者の割合が半分に激減していることがわかる。
選ばれた選手が物足りない、ということではなく、ここまでバランスが悪いことで、いわゆる「ジグザグ打線」が組めないのはもちろん、代打戦略などに影響はでないのだろうか? とちょっと不安になってしまう。「左右」という視点に立てば、今回のメンバーは投打ともに「右寄り」といえるのだ。
ここまで、「左不足」という“バランスの悪さ”を見てきたが、“バランスのよさ”は何かないのだろうか? そこで浮かび上がるのが選ばれた球団の数だ。各代表チームを「選出球団数」で見てみよう(以下、球団の並び順は前年ペナントレースの順位)。
■2017WBC
セ・リーグ球団:12人
広島3人/巨人人3人/DeNA1人/阪神1人/ヤクルト2人/中日2人
パ・リーグ球団:15人
日本ハム5人/ソフトバンク3人/ロッテ1人/西武2人/楽天3人/オリックス1人
MLB:1人
■2013WBC
セ・リーグ球団:14人
巨人7人/中日2人/ヤクルト1人/広島2人/阪神2人/DeNA 0人
パ・リーグ球団:15人
日本ハム2人/西武3人/ソフトバンク6人/楽天2人/ロッテ1人/オリックス1人
MLB:0人
■2009WBC
セ・リーグ球団:11人
巨人5人/阪神2人/中日0人/広島1人/ヤクルト1人/横浜2人
パ・リーグ球団:12人
西武3人/オリックス1人/日本ハム2人/ロッテ1人/楽天2人/ソフトバンク3人
MLB:5人
■2006WBC
セ・リーグ球団:13人
阪神2人/中日2人/横浜3人/ヤクルト4人/巨人1人/広島1人
パ・リーグ球団:15人
ロッテ8人/ソフトバンク4人/西武2人/オリックス0人/日本ハム1人/楽天0人
MLB:2人
意外なことに、12球団全チームから代表選手が選ばれたのは4大会目にして今回が初めてのこと。どの球団のファンであっても応援しがいのあるチーム、といえるのかもしれない。また、別な視点でみると、今回も含め、歴代チームはすべて、セ・リーグよりもパ・リーグ球団からの選出人数の方が多かった。ここ10年の「パ高セ低」を如実に物語っている、といえるだろう。
最後に、選手、コーチの年齢についても比較検証してみたい。
■2017WBC
選手平均年齢:27.6歳/監督・コーチ平均年齢:49.6歳
■2013WBC
選手平均年齢:29.0歳/監督・コーチ平均年齢:53.3歳
■2009WBC
選手平均年齢:27.9歳/監督・コーチ平均年齢:49.1歳
■2006WBC
選手平均年齢:28.8歳/監督・コーチ平均年齢:51.8歳
選手平均は過去最も若く、監督、コーチの平均でも過去2番目に若いチームが今回の侍ジャパンだ。監督、コーチにしても御年78歳の権藤博投手コーチ一人で押しあげているだけで、他は45歳の小久保監督を筆頭に全員40代と、非常に若い首脳陣だ。「若武者ジャパン」といえるだろう。
尚、今回のメンバーで最も若いのが21歳の松井裕樹(楽天)。最高齢が35歳の青木宣親(アストロズ)だ。唯一のMLB選手として期待がかかる青木だが、年齢・経験でも若いチームを引っぱる役割が求められている、ということかもしれない。
大谷翔平の足首故障の調整不足の問題もあり、今後メンバー変更の可能性もあるが、現状の代表チームの特徴を知る手がかりとして参考にしていただければ幸いだ。
■投手
大谷翔平(22=日本ハム)右投左打
増井浩俊(32=日本ハム)右投右打
宮西尚生(31=日本ハム)左投左打
菅野智之(27=巨人)右投右打
秋吉亮(27=ヤクルト)右投右打
牧田和久(32=西武)右投右打
則本昂大(26=楽天)右投左打
松井裕樹(21=楽天)左投左打
千賀滉大(23=ソフトバンク)右投左打
石川歩(28=ロッテ)右投右打
藤浪晋太郎(22=阪神)右投右打
岡田俊哉(25=中日)左投左打
平野佳寿(32=オリックス)右投右打
■捕手
嶋基宏(32=楽天)右投右打
大野奨太(30=日本ハム)右投右打
小林誠司(27=巨人)右投右打
■内野手
中田翔(27=日本ハム)右投右打
菊池涼介(26=広島)右投右打
坂本勇人(28=巨人)右投右打
山田哲人(24=ヤクルト)右投右打
松田宣浩(33=ソフトバンク)右投右打
田中広輔(27=広島)右投左打
■外野手
内川聖一(34=ソフトバンク)右投右打
筒香嘉智(25=DeNA)右投左打
秋山翔吾(28=西武)右投左打
鈴木誠也(22=広島)右投右打
青木宣親(35=アストロズ)右投左打
平田良介(28=中日)右投右打
■監督・コーチ
監督:小久保裕紀(45)
ヘッドコーチ:奈良原浩(48)
投手コーチ:権藤博(78)
バッテリーコーチ:村田善則(42)
打撃コーチ:稲葉篤紀(44)
内野・守備走塁コーチ:仁志敏久(45)
外野・守備走塁コーチ:大西崇之(45)
文=オグマナオト