例年、オフになると周辺が騒がしくなるのがFAを取得した選手たちだ。今年は、このFA権を行使し、秋山翔吾(西武)がメジャーリーグのレッズへ、福田秀平(ソフトバンク)と美馬学(楽天)がロッテへ、鈴木大地(ロッテ)が楽天へと、それぞれ移籍した。他にも、権利を取得しながら行使せず残留、また行使しての残留となった選手も数多くいた。
さて、2020年のシーズンオフには、どんな選手がFA権を取得するのか。主だった選手をピックアップしていきたい。前回の野手編に続き、今回は投手編だ。
今季オフにFAの可能性がある注目投手の筆頭格は小川泰弘(ヤクルト)だ。順調なら、まず国内FA、そして来季オフには海外FAが可能になる。
昨年末の更改で、球団から打診された複数年契約を断ったことからも、おそらくその後のことも視野に入れているのだろう。
ルーキーイヤーの2013年、いきなり16勝4敗という好成績で最多勝、最高勝率のタイトルを獲得し、文句なしの新人王に輝いた小川。ただ、度重なる故障もあって、2年目以降の6年間で、規定投球回数に達したのは3回しかなく、2ケタ勝利も2015年(11勝8敗)のみ。そういった事態を打開すべく、昨季は、トレードマークでもある左足を大きく上げるフォームを封印、その上げ幅を抑えめにしてシーズンに臨んだが、5勝12敗と大きく負け越してしまった。
今季は、また元の「ライアン流」のフォームに戻す可能性もありそうだが、いずれにしても結果を残せるかどうか。1年間ローテションを守れる投手はどこの球団にとっても貴重。復調してFA宣言すれば、興味を示す球団は少なくないはずだ。
同じく先発型では大野雄大(中日)も今季オフに国内FA宣言が可能となりそう。昨季は9勝8敗と勝ち星こそ伸ばせなかったが、防御率2.58はセ・リーグトップ。自身初のタイトルを獲得した。さらに、9月14日の阪神戦では史上81人目となるノーヒットノーランを達成するなど、数年ぶりに充実したシーズンだったのではないだろうか。
左の先発投手が間に合っているのはDeNAぐらいなので、今季も同レベルの投球を続けてFA宣言した場合、多くのオファーが届きそう。
リリーバーでは増田達至(西武)と松永昂大(ロッテ)が注目さりそうだ。完投が激減し、小刻みな継投が当たり前となっている現代野球に、タフなリリーバーはチームに何人いてもいい。
増田は、パ・リーグ連覇中の西武の守護神。2018年は41試合に登板し2勝4敗、2ホールド14セーブで防御率5.17と精彩を欠いたが、昨季は65試合で4勝1敗、7ホールド30セーブで防御率は1.81。見事な復活劇で大きくチームに貢献した。プレッシャーがかかる役割ゆえに、年によって成績に波があるのは仕方がない部分もある。
松永は、2013年のデビュー以来、毎年コンスタントに40試合から60試合程度登板しており、防御率も3点台以下にまとめている。昨季は、5月にヒジ、9月には肩を痛め、2度の登録抹消を経験。それでもセットアッパーとして46試合に登板し、2勝3敗、25ホールド、防御率2.60と奮闘した。
どちらも昨年末に単年契約を交わしていて、とくに増田は球団が提示した複数年契約を断っている。来オフの動向から目が離せない。
他にも、今村猛(広島)、内竜也(ロッテ)、辛島航(楽天)、海田智行(オリックス)といった面々が今季中にFAの資格を満たす。なお、2年連続で30セーブ以上を挙げ、サファテの代役をしっかり務めているソフトバンクの森唯斗も今季中に国内FAの資格を満たすが、昨年末に4年契約で合意。FA権を行使する可能性は低いだろう。
文=藤山剣(ふじやま・けん)