6月に入ってからオリックスに加入したマレーロ。入団会見では「自分に期待されているのは強い打撃。打つことでチームに貢献したい」とコメントしていた。
その思いを結果で示すかのように、日本デビューとなった6月9日の中日戦で、レフトスタンドへの一発を放つ。しかし、ベンチ前でのハイタッチを終えたところで、まさかの事態が。中日側の「ホームベースを踏んでいない」とのアピールが認められ、マレーロはアウト。記録は三塁打となってしまった……。
しかし、翌日の試合でもめげずに左中間スタンドに一発。今度は、しっかり両足でホームベースを踏み、正真正銘の第1号。さらに、9月29日のロッテ戦で放った今季19号は日本プロ野球通算10万号というスーパーメモリアルアーチとなり、100万円のボーナスをゲットしている。日本デビュー戦での「ホームベース踏み忘れ」があったからこそメモリアルアーチにつながったのは、たいした奇遇ぶりだ。
と、いろいろあったマレーロだったが、最終的には今季82試合の出場で打率.290、20本塁打。9月上旬に早くも来季の契約を交わすほど球団の期待も高い。Bクラスの常連となりつつあるチームを救えるか。来季も注目だ。
まさかの幻のホームランといえば、3月7日に行われたWBC・1次ラウンドの日本対キューバでも、こんなことがあった。
4回裏、2死二塁。1対1の同点の場面で打席に入った山田哲人(ヤクルト)は、レフトスタンドへギリギリの大飛球を放つ。一旦は逆転本塁打として東京ドームも歓喜に包まれるも、ビデオ判定により、フェンス最前列にいた観客の少年がグラブを差し出して捕球していたことが判明。規定により二塁打に。なんと「幻のホームラン」となってしまった。
しかし、最終的には日本打線が爆発し11対6で勝利し、やれやれと事なきを得たはずだった……。
ところが、インターネット上には、少年の捕球シーンや、スタンド裏で少年が球場の係員にお叱り受ける画像が出回り、また翌日の新聞で大きく取り上げられたこともあって、少年の周辺が大炎上してしまう。
この状況に胸を痛めたのは当事者の山田哲人。少年に向けてこんなコメントを発した。
「これで野球を嫌いにならないで、またグラブを持って球場に来て欲しい。今度は完璧なホームランを打つから」
これは珍事が生んだ文句なしの好プレー。ようやく騒動は終息へと向かったのだった。
ベース踏み忘れでは、重信慎之介(巨人)もまさかの珍プレーをやらかしている。それは8月6日の中日戦で、巨人が1点ビハインドの9回裏1死一、二塁という緊迫した場面で起こった。
ここで、坂本勇人が右中間へライナー性の強い当たりを放つ。一塁走者の重信は外野手の間を抜けると判断し、一気に二塁へ。しかし、中日の中堅・大島洋平が好捕。二塁ベースを回っていた重信は慌てて一塁まで戻った。普通なら、2死一、二塁からゲームが再開されるところだが、次打者の阿部慎之助が打席に入ったところで、投手から二塁へ送球され、二塁手がベースにタッチ。審判がアウトのコールを発し、ゲームセットとなった。
いったん二塁を回った一塁走者は、一塁まで戻る場合は二塁ベースを踏んで戻らなければならない。ところが重信は二塁ベースを踏まずに、ダイヤモンド内を軽くショートカットするようなルートで一塁まで戻っていたのだった。
重信はこのルールを認識していなかったとのことで、巨人の村田真一ヘッドコーチが「ちゃんと教えていなかった我々も悪い」と責任を代弁。これもまた、まさかの珍コメントではあるが……。
なお、最後のマウンドに立っていたのは岩瀬仁紀で、この試合で日本記録となる950試合登板を達成。あっけない幕切れに騒然とするグラウンドのなかで、記念ボードを贈られるというシーンも、珍プレー感を高めた。
文=藤山剣(ふじやま・けん)