本塁突入時のクロスプレーによるケガを防止するために、2016年から導入された「コリジョンルール」。それに伴って、昨年まではフェンス際やポール付近のホームランの判定にのみ用いられていたビデオ判定が、本塁上のクロスプレーに対しても適用されることとなった。
しかし、これが波乱を呼ぶ。3月15日のヤクルト対広島のオープン戦で、ホームでのクロスプレーがアウトからセーフへと判定が覆った。このハプニングを皮切りに、コリジョンルール適用と、ビデオ判定により単なるミスジャッジ発覚のケースが相まって、現場は混乱。審判の判断に対してNPBに意見書を提出する球団が続出したのだった。
事態の収束を図るべく、NPBは、後半戦(7月22日)からルールの運用を一部あらためるという異例の措置に。それでも、スッキリしたとは言い難い状況のままシーズンを終えた。
選手のケガ防止と、事実に則した正しい判定。この2つが徹底されることに反対する球界関係者、マスコミ、ファンはいないはず。毎回、誰もが納得する判定というのは難しいが、一定の基準でルールが適用されてこそ競技が成立するのも確か。来季は、どうにかいい方向に進んでほしいものだ。
世界のホームランキング・王貞治氏(現ソフトバンク球団会長)の育ての親である荒川博氏(元巨人コーチほか)が、12月4日、心不全のため東京都内の病院で亡くなった。86歳だった。
真剣を使った練習、畳が擦り切れるまで続けられた素振り……。二人三脚で一本足打法を作り上げた荒川氏は、「王貞治偉人物語」には欠かせない登場人物だ。
プロ野球のコーチを退いてからは、合気道を応用し、ゴルファーへの指導も行っており、トッププロの片山晋呉や上田桃子らも門下生だったという。
ご冥福をお祈りします。
オリックスからFA宣言していた糸井嘉男が、4年18億円以上という契約で阪神への移籍を決断した(金額は推定)。
今季は35歳にして53盗塁というキャリアハイの盗塁数で盗塁王に輝き、打率も.306と好成績。昨季はケガもあって低迷したが、見事に復活を果たし、人気球団との大型契約を勝ち取った。
年齢を考えても異例ともいえる長期契約だが、攻撃面だけでなくセンターライン強化という守備面のプラスも計算に入れてのオファーなのだろう。ただ、屈強そうに見える糸井だが、全試合出場は今季が始めて。ケガなく試合に出続けることがまずは最低限の仕事となる。
選手兼任として2014と2015年、専任として2016年と3年間、チームを率いていた中日の谷繁元信監督が、チーム低迷の責任を負う形で、8月9日から休養に入り、そのまま退団という事態に。
休養後は森繁和ヘッドコーチが監督代行としてチームの指揮を執り、シーズン終了後、正式に森監督代行の監督就任が発表された。
中日の2013年から2016年までの順位は4位、4位、5位、6位と、4年連続でBクラス。これはセ・パ2リーグ制になった1950年以降の球団史上ワーストという不名誉な記録だ。
「谷」繁から「森」繁へ。連想ゲーム的な交代劇だが、森新監督は、中日以外にも西武、日本ハム、横浜で投手コーチを務めており、ドミニカ共和国にもパイプを持つ稀有な存在でもある。
見た目はワイルドでダンディな森新監督が、どんなチームマネジメントを見せてくれるのか注目したい。
広島の黒田博樹が、7月23日、マツダスタジアムでの阪神戦で、7回無失点の好投を演じ今季7勝目を挙げた。この勝利で黒田は、日米通算200勝(日本121勝、アメリカ79勝)の大台に到達。日米通算での200勝は、野茂英雄以来の史上2人目の快挙となった。
その後も勝ち星を重ね、今季の成績は、24試合に登板し10勝8敗で防御率3.09と上々の数字。そして、日本シリーズ前には引退を表明した。
2014年オフに、メジャー球団からの20億円以上のオファーを蹴って、古巣・広島でプレーすることを決断した黒田。その一連の行動は「男気」と称えられた。だからこそ、引退表明に対してもカープファンからは感謝の声が多く集まったのだろう。
なお、背番号「15」は永久欠番に。その名は、文字通り永久に球史に刻まれることとなる。
高卒の生え抜き投手として、25年に渡りチームを支えてきた三浦大輔が、ついに引退を表明した。
通算172勝。200勝には届かなかったが、7月11日の中日戦で「投手として24年連続安打」というギネス認定の世界記録を達成。そして、昨年までの24年連続勝利は日本タイ記録でもある。
「練習するしかなかった」と本人が語るドラフト6位入団選手でも、ここまでの存在になれたという経験は、近い将来、指導者としてグラウンドに戻ってきたときに、必ず役立つはずだ。
「つなぎの4番」という新たなワードを生んだロッテのサブローも、22年間の現役生活にピリオドを打った。
今季は、最後まで戦力として1軍に呼ばれることがなかったサブロー。それでも、9月25日をサブローの引退試合にするという球団発表があった瞬間、チケットは即完売に。
最近のファンの熱さは、各球団とも甲乙付けがたいが、「声の大きさやまとまりは日本一」とサブローが称したように、ロッテファンは、選手とファンが一体化したファミリー感が強いイメージがある。だからこそ、「ロッテ→半年間だけ巨人→ロッテ」という軌跡をたどったサブローに対しても、変わらぬ熱い声援が送られたのだろう。
現役最終打席、マリンスタジアムの場内放送を努める谷保恵美さんのラストコール「4番、ライト、サブローーーーーーー」には球場中が涙。そして、オリックスの平野佳寿が投じた149キロのストレートを右中間へ運ぶ二塁打を放ったサブローも、塁上で涙を見せたのだった。
文=藤山剣(ふじやま・けん)