まずは中川大志だ。昨年、格安年俸の4番打者として注目を集めた和製大砲候補は、打席内で右手首を鼻に当てる仕草をみせる。
あらかじめつけた甘い香水をかぎながら深呼吸をすることで、平常心を保つのだという。なるほど、あがり症の中川によるリラックス方法なのだ。
一番有名な曲芸は、FA加入した今江敏晃の“バット投げ出し打法”だろう。ロッテ時代から披露するこの打法は、スイングしにいくバットをコンタクトの直前で手放し、放り出したバットに球を当てていく今江特有の個人技。特に外角低め変化球のときに多くみられる。
楽天移籍後の今シーズンも7月3日現在、7回披露している。その結果は5打数1安打2三振(うちファウル2本)。3月30日、古巣・ロッテ戦の7回にこの打法で放ったセカンド内野安打は、終盤の貴重な追加点を叩き出すタイムリーになった。
この曲芸はチームメイトも真似するようになり、聖澤諒と銀次も挑戦。しかし、ヒットは出ていない。聖澤は5回試みて、3打数無安打2三振(うちファウル2本)。銀次は1回試みた結果、ファウルに終わった。
銀次はクルクルと操るバット回しでも有名。今季、その動きが『パ・リーグTV』に取り上げられ、話題を呼んだのは記憶に新しい。
まるでバトントワリングのように、ハッとする美しいバット回しを披露するのだが、とくにインコース攻めの球をよけるとき、低めの誘い球を見切ったあとにみせることが多い。球界屈指のコンタクトヒッターならではの“魅せ技”だ。
68試合268打席で打率.279、1本塁打、26打点。新人王最有力という好活躍を見せていたドラ3ルーキー、茂木栄五郎の一礼も興味深い。
打席に向かうとき、球審に向けて礼儀正しくお辞儀をしてからバッターボックスに入るルーティンは、早稲田大学時代から続けている。審判も人の子。茂木の空振り三振が44個に対して、見逃し三振が4個と非常に少ないのは、この一礼の賜物だろうか?
読者の皆さんにも、応援しているチームや贔屓の選手のプレーだけではなく、独特なルーティンや仕草、そのクセにも目配りしながら観戦することをお薦めしたい。そこには「新発見」が待っているはずだ。
文=柴川友次(しばかわ・ゆうじ)