もし、あなたがスコアをつけてみようと思うなら、迷わずプロ野球の試合から始めることをおすすめする。プロ野球の試合が最もつけやすいからだ。そして最もつけるのが難しいのがアマチュア野球、特に高校野球だ。
なぜ、プロ野球がつけやすいのか。プロ野球の試合には「間」があるからだ。プレーとプレーの間、投球ごとの間、イニングごとの間など、スコアをつけるのに十分な間がある。もし、スコアのつけ方に迷っても、考える時間がある。
逆に高校野球はかなりスピーディー。少し目を離すと、もう次の投球が終わっているなんてことはザラにある。同じ9イニングを3時間かかるプロ野球と、1時間半で終わる高校野球の差は大きい。
もうひとつプロ野球がつけやすい理由は、プレーに「紛れ」がないということだ。とんでもないプレーは起こりにくく、たいていは想定内のプレーで収まる。例えば、挟殺プレーが起こっても、少ないプレーでランナーをアウトにする。
これが高校野球になると、挟殺プレーに手間取ってしまうことも多い。スコアのマスの中に収まらないぐらいの数字を並べなければならなってしまうのだ。
プロ野球はのんびりと楽しみながらスコアをつけられるが、高校野球はスピード勝負。上級者向きである。
スコアをつけるのに適した観戦位置は、やはりバックネット裏の高い位置にある席だろう。この席からだとプレー全体を見渡すことができる。長打が出たときに、誰が打球を処理し、誰が中継に入ったのかを把握しやすい。
プロ野球の試合なら、記者席に近い場所に座ることもおすすめ。公式記録員の音声が聞こえることがあるからだ。投手が降板したときなど、投球数をアナウンスしてくれるので便利である。このあたりの席には、スコアをつけている方が何人か座っている。
野外球場のデーゲームでは、できるなら日陰になる位置に座りたい。直射日光が当たり、反射したスコアシートはとてもまぶしい。もし日なたでの観戦になるならサングラスをかけるなど、対策しなければならない。
もうひとつ、トイレの位置を把握すること忘れないように。スコアをつけている間はトイレに立つことができない。唯一のチャンスが5回終了後のグラウンド整備の時間だ。5回終了と共にトイレに立ち、6回のプレーが始まるまでに席に帰ってくる。そんなルーティーンができあがっているファンもいる。
実は、「スコアの正しいつけ方」というものは存在しない。世の中にはスコアのつけかたを説明した書籍があり、市販のスコアブックにもスコアのつけ方は載っているが、「このようにつけなければいけない」というルールはない。自分独自の記入の仕方で記録をすればいいのである。
ただし、チームや団体などでスコアシートを共有する場合は、記入ルールを決めておく必要がある。そうでなければ、自分なりに工夫をすればよい。記入の仕方に迷ったときこそ、独自の解釈で記入しよう。それこそスコアをつける楽しみ方のひとつだ。
文=矢上豊(やがみ・ゆたか)
関西在住の山本昌世代。初めてのプロ野球観戦は、今はなき大阪球場での南海対阪急戦と、生粋の関西パ・リーグ党。以来、阪急、オリックス一筋の熱狂的ファン。プロ野球のみならず、関西の大学、社会人などのアマチュア野球も年間を通じて観戦中。