3月23日の開幕に向けて、いよいよカウントダウンが始まった第91回選抜高等学校野球大会(以下、センバツ)。
昨年の覇者・大阪桐蔭(大阪)は出場を逃したが、創部10年で明治神宮大会を制した札幌大谷(北海道)、世代ナンバーワン右腕とも評される奥川恭伸を擁する星稜(石川)、注目選手が複数揃う東邦(愛知)など好チームが集い、盛り上がりは必死だ。
先週紹介した注目チーム&選手に続き、今回はセンバツに出場する監督にスポットを当ててみたい。常に強豪を作り上げる名将、明日の高校野球界を担う新世代監督など、今大会も個性豊かな面々が揃った。
今年のセンバツ出場チームのなかで、最多の出場回数41回(夏は34回出場)を誇る龍谷大平安(京都)。春優勝1回、夏優勝3回を誇る名門中の名門を率いるのは、今年で就任26年目となる原田英彦監督だ。
少年時代から「HEIAN」に憧れ、チームのOBでもある原田監督は低迷する母校を再建。自ら「一番の平安ファン」を公言し、名門復活を成し遂げた。だからこそ人一倍「強くあってほしい」と厳しい態度で選手たちに接してきたが、変わりゆく選手の気質に合わせて指導方法を変える柔軟性も持ち合わせている。
昨夏の甲子園では2勝を挙げ、通算101勝を達成。それでも燃え尽きることなく、秋季近畿大会優勝と強いチームに仕上げてきた。今春はどこまで聖地での勝利を積み重ねるのだろうか。
2010年に八戸学院光星(青森)の指揮官となってから、「猛打」のチームカラーで2011年夏から2012年夏にかけて3季連続甲子園準優勝するなど、勝ち星を積み重ねている仲井宗基監督(3季連続優勝時は光星学院)。
その後もコンスタントにチームを甲子園に導いているが、初戦はしっかりと勝つものの2勝目がなかなか遠いという状況が続いている。
センバツは3年ぶりだが、昨夏の甲子園経験者が多く、冬のトレーニングも順調だったことから仲井監督も手応えを感じている様子。悲願の東北勢初優勝に向けて、どんなタクトを振るのか楽しみだ。
昨年はセンバツ準優勝以上に、高嶋仁監督の勇退に揺れた智辯和歌山(和歌山)。後任に選ばれたのは智辯和歌山OBで、阪神や楽天で捕手としてプレーした経験もある中谷仁監督だ。
高嶋前監督が「(中谷監督が同校の)2年時の頃から後任候補として考えていた」という。名将らしい先見の明があったことがうかがえる。とはいえプレッシャーに負けずに、早速、秋季近畿大会ベスト4からのセンバツ出場と結果を出した中谷監督もさすが。
師は3度の全国制覇を成し遂げたが、弟子はそれを超えられるか。並大抵のことではないが、期待せずにはいられない。
高校野球の主役は、あくまでグラウンドで躍動する選手たち。そうは思っていても、ついついベンチの将の顔を見たくなる。
戦略を考える軍師であり、選手を導く指導者であり、ときに父や兄のような存在になる高校野球の監督。一辺倒では務まらない、人としての深さが必要と思わされる仕事だ。
最近の高校野球では30代の若い監督が結果を出し、世代交代の波を感じることもある。百戦錬磨の名将たちと新進気鋭の監督たちがどう交わっていくのか。そんな趨勢もこれからの高校野球を見る楽しみにしたい。
文=森田真悟(もりた・しんご)