「Centuries」は、たとえば藤川球児(阪神)の登場曲、LINDBERGの「every little thing every precious thing」や、メジャー通算652セーブを挙げたマリアノ・リベラ(ヤンキース)の登場曲、Metallicaの「Enter Sandman」のように、楽天ファンのみならず、野球好きに広く知られる「勝利のアンセム」になろうとしている。
3月に開催されたWBCに松井裕は侍ジャパンの一員として出場。本大会で3試合2回2/3を投げて無失点。打者9人と対戦し、エンゼルスのアンドレルトン・シモンズを含む奪三振5を記録した。
他球団の一流投手と交流し、国際大会で腕を振った経験が生きているのだろう。昨シーズンとは一転、「鬼神のような支配力」と「超絶の安定感」が出てきた。
防御率3.32に終わった昨シーズンから最も大きく変わったのは、本人の意図と反する抜け球や逆球が少なくなったところ。投球フォームが安定したことでストライクゾーンから大きく外れるボール球が減った。
9イニングでフォアボールを平均何個出すかを示す与四球率を見ると昨シーズンは5.78、今シーズンは4.70、実は大きくは減っておらず、「えっ、そうなの?」と思う方もいるかもしれない。
しかし、最も出塁させてはならないイニングの先頭打者との対戦成績が、見違えるほどに大きく改善されている。
昨シーズンは.385だったイニングの先頭打者の出塁率が、今シーズンは.130である。昨シーズンは制球を乱して、先頭打者に簡単に四球を与えてしまうケースが多かった。
これがファンをハラハラドキドキさせる原因になり、松井裕が本領発揮できない元凶にもなっていた。
しかし、今シーズンは12個の四球うち、先頭打者には与えたものはわずかに2個。マウンドに登るやいなや、いきなりパワーMAXで、何よりもまずは抑えなければならない先頭打者をねじ伏せているのだ。
投球フォームが安定したことで、ストレートがしっかりと指にかかるようになった。腕の振りも改善されたことで、球種での差異が少なくなり、球威、キレともに増したのだろう。
空振り率も上昇している。打者がバットを振ってきたときの空振り率は、筆者調べだと、今シーズンは前年比5%アップの37%を記録する。
年に1度の東京ドームでの主催試合となった4月25日ロッテ戦。9回に登板した松井裕は三者連続三球三振という離れ業をやってみせた。9球勝負。打者がスイングしてきたのは8球。そのうち奪った空振りは実に7球を数えた。
残り100試合以上ある今後のペナントレースでも、僕らをアッと言わせる歴史的快投をみせ、チームを日本一に導くはずだ。
(成績は5月22日現在)
文=柴川友次
NHK大河ドラマ「真田丸」で盛り上がった信州上田に在住。真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴を定点観測するブログを運営中。