センバツで評価をさらに上げたのは、まずは何と言っても根尾昂(大阪桐蔭)だろう。遊撃手を中心に投手、外野手もこなす三刀流選手として名を馳せているが、これまではどちらかというと野手としてプレーする機会の方が多かった。
しかし、センバツでは智辯和歌山との決勝を含む3試合に登板し、2完投、防御率0.93という完璧な投球を披露。スカウトの評価も「投手分」が上乗せされて、さらに高まっている。
異次元ともいえる選手層の大阪桐蔭にあって、さらに頭ひとつ抜けている感のある根尾。このまま成長し続けたら、一体どれほどの選手になるのだろうか。
その根尾を擁する大阪桐蔭(大阪)を、センバツでもっとも苦しめたのが三重(三重)。その立役者となったエースの定本拓真もまた、ドラフトに向け評価を上げている。
先発で2試合、リリーフで1試合、マウンドに立った定本。初戦で日大三(東京)を完封すると、星稜(石川)戦では最終回に登板。14対9という乱打戦を、自身はきっちりゼロで締めた。準決勝の大阪桐蔭戦では延長12回を投げ抜き、被安打7、自責点2(失点3)。サヨナラ負けを喫したものの、大阪桐蔭の強力打線を相手に見事な投球を見せた。
昨秋の不調でセンバツでは背番号「1」を譲ったが、エースの座は守った。その気概も、プロのスカウトをうならせたことだろう。
評価のしやすさというと、「試合数=見られるプレー」の多さで、勝ち進んだチームの選手の方に分がある。しかし、試合数が少ないなかで光るものを見せたのが、日置航(日大三)と小幡竜平(宮崎・延岡学園)だ。
日置は昨春のセンバツでは1試合を戦って4打数0安打と精彩を欠いたが、今センバツでは2試合で8打数5安打、1本塁打と本来の力を披露。見事リベンジを果たした。
初戦で姿を消した小幡は、4打数1安打と安打数は少なかったものの「根尾や小園(海斗、兵庫・報徳学園)と比較される存在になる」と語るプロのスカウトが出現。もともと強肩好守のドラフト候補として注目されていたが、今後はさらに熱視線を集めることになりそうだ。
スカウトの評価を上げるには大舞台で活躍するのが一番だが、言うは易し、行うは難し。それだけにプレッシャーのかかる場面でしっかりと結果を出した選手には、スカウトが高い評価を下す。
センバツで評価を上げた選手が、これからどうなっていくのか。さらに評価を上げるのか、それとも下げてしまうのか。注目しながら夏を待ちたい。
文=森田真悟(もりた・しんご)