中日1位の柳裕也(明治大)とヤクルト2位の星知弥(明治大)は揃って明治神宮大会優勝という最高の手土産を持って入団する。
柳は明治大の絶対的エースとして秋のリーグ戦は5勝無敗。防御率1.64でベストナインに選出された。明治神宮大会でもその実力を存分に発揮し、3試合に先発して16回を2失点。決勝の桜美林大戦ではストレートの最速は140キロと疲れが見えたが、それでも4回を2失点。調子の悪いなかでもなんとか試合をまとめて見せた。
ヤクルト2位の星は、秋のリーグ戦で3勝2敗、防御率2.13とまずまずの成績を残す。明治神宮外苑創建90年記念奉納試合のヤクルト戦では先発し、2回を1安打無失点。山田哲人から三振を奪った。ほかのドラフト指名選手がみな失点するなか、唯一無失点に抑えて実力をアピール。来季から一員となるヤクルトの選手にも鮮烈な印象を残したに違いない。
また、明治神宮大会決勝では柳からマウンドを引き継ぎ、5回を無失点に抑え胴上げ投手に。大会を通しても9回1/3を無失点。ドラフト指名後に評価をさらに上げた。
巨人4位の左腕・池田駿(ヤマハ)はドラフト後に行われた日本選手権優勝に大きく貢献。3試合に先発し19回2/3を投げ、防御率2.30。決勝の日本通運戦でも先発し、7回2/3を1失点。毎回の10三振を奪った。MVPにも輝き、有終の美を飾った。
今季は菅野智之と田口麗斗以外は先発陣を固定できなかった巨人だけに、競争に勝てば早い時期での1軍登板も期待できる。
広島1位の加藤拓也(慶應義塾大)は秋季リーグ戦の東京大戦でノーヒットノーランを達成。この秋は27回を投げ31奪三振。高い奪三振力も示した。その反面、四死球は12とコントロールには不安を残した。
慶應義塾大では主に先発を担ったが、最速153キロのストレートだけでなく、変化球も多彩。高い奪三振力も誇ることから、リリーフでの起用も面白い。いずれは中崎翔太(広島)との守護神争いも見てみたい。
DeNA1位の濱口遥大(神奈川大)は不完全燃焼の秋となってしまった。明治神宮大会出場を賭けた横浜市長杯準々決勝の共栄大戦に先発するも、先頭打者から2者連続で四球を与え、タイムリーと2つの押し出し四球で5失点を喫し初回KO。わずか1アウトしか取れなかった。
1週間前に左手中指に血マメができた影響もあったが、悔しさの残る大学最後の登板となってしまった。
阪神2位の小野泰己(富士大)は秋の北東北大学リーグで5勝無敗、防御率0.49。MVP、ベストナインに選ばれた。奪三振の数が投球回数を10近く上回る49個と高い奪三振力も見せ、まさに完璧な内容だった。
明治神宮大会の初戦では上武大を相手7回1失点と好投するも、打線の援護に恵まれず敗退。それでも自己最速タイの152キロを記録するなど、大舞台に強いところを見せた。
セ・リーグの6球団から1人ずつ注目指名選手の秋を振り返ってみた。セ・リーグには柳、星、池田と今秋、大学生、社会人野球の全国大会で優勝した3名の選手が入団。この勢いのまま、プロの世界でも活躍してもらいたい。
反対に課題の制球力を改善できずにいる加藤、不完全燃焼の秋となってしまった濱口、まだ未知数な面も多い小野……、このタイプも多様な6名がどんなプロ1年目を過ごすのか注目したい。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)