連日、熱戦が続く夏の高校野球地方大会。全国49地区で開催され、多いときは1日で200試合以上も行われる地方大会では、めったに見ることができない「信じられない」試合が起きるのだ。
世にも珍しい結末で2試合も今夏の地方大会で起きた。7月14日、岩手大会2回戦の住田対専大北上の試合は、9回表まで4−2と住田がリード。甲子園出場経験もある専大北上は意地をみせ、9回裏2死満塁から同点タイムリーを放つ。ここで動揺する住田のエース・及川瑠依は、続く打者に対して痛恨のボーク。住田はサヨナラ負けを喫してしまったのだ。
また、熊本大会でもサヨナラボークが同日にあった。プロ野球OBの前田智徳(元広島)ら、多くのプロ選手を輩出している熊本工は熊本農と対戦。8−8のまま迎えた延長10回裏、1死三塁の場面で熊本農の園田一真がボークをとられて、残念ながらサヨナラ負けを喫してしまった。
こちらは投球モーションに入る直前に、打者が打席を外し、審判がタイムをかけたようにも見えた園田は投球動作をストップ。ところが、球審はタイムを宣告しておらず、ボークの判定が下され、三塁走者がサヨナラのホームを踏んだのだった。
今から17年前の1998年夏の甲子園2回戦。豊田大谷対宇部商の一戦は、延長15回裏に甲子園では史上初となるサヨナラボークで決着がつき、豊田大谷が勝利した。その瞬間の宇部商・藤田修平の呆然とした表情を覚えている高校野球ファンは多いだろう。今回の両投手も、無念の表情を浮かべながら、ゲームセットの瞬間を迎えた。
今年は3906校が参加し、それだけの試合数が行われる地方大会では、驚きの背景を持つ選手が活躍することもある。話題性があって目立つのも、夏の高校野球地方大会の特徴といえるだろう。
野球部員がたった1人で、なんと9人に助っ人を頼んで千葉大会に出場したのは文理開成。4番・捕手を務めた助っ人の黒川英充が2打席連続本塁打を放つも、試合は5−19で大敗した。
この黒川は、なんと“帰宅部”だというから恐れ入る。今年4月に文理開成に転入してきたが、前校では1年の冬まで野球部に所属していた。その後は草野球をしていた程度にとどまり、転入してきた文理開成でも、どの部にも所属していなかった。本人も驚きの2打席連続本塁打に、ネットでは「最強の帰宅部現る!」と騒がれた。
同じく千葉大会ではサッカー部の助っ人も出現。野球部が8人の浦安南は、残る1人を運動神経抜群のサッカー部員に依頼。その選手は9番・左翼手で出場して、3安打1打点の大活躍をみせ、浦安南の22年ぶり夏1勝に大貢献したのだった。