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張本勲に喝! 新年だからこそ読みたい野村克也節炸裂の『セ界恐慌』

 2016年は誰が「喝!」で、誰が「あっぱれ」な年になるのか!?

 世紀の安打製造機としてよりも、最近では「喝!おじさん」として知られる張本勲氏(元東映ほか)。昨年もさまざまな選手に「喝!」を叫んでは物議を醸した。これはこれでひとつの芸として笑うのが大人のたしなみ、ともいえるが、お気に入りの選手が的になると、異議を唱えたくなるのも仕方がない。


 そんな張本御大に「喝!」を唱えてくれたのが稀代の名捕手、野村克也氏(元南海ほか)だ。昨年末に上梓した『セ界恐慌』のなかで、「『喝!』の張本勲は選手批判する資格なし」と綴っている。


張本勲はなぜ「喝!」なのか?


「私も一度だけあの番組に呼ばれ、共演したことがあったが、彼は選手批判をできるような立場ではないと言ってやりたい」と綴る野村氏。その理由は、現役時代の張本氏のプレースタイルにあった。問題は、打つこと以外のプレーへの「姿勢」についてだ。

●興味があるのは打つことだけ。走らないし、守らない。
●ピッチャーゴロを打ったら、まずセーフにならないから、もう走らない。
●足は速いのだから、塁に出れば嫌な選手なのだが、盗塁なんてまったく興味がない。
●守備も下手なりに一生懸命やるのならまだいい。守備に就いていて、守備をしないのだから困ったものだ。

と、辛辣なコメントを重ねていく。

 では、そんな張本氏がなぜ、「喝!」を唱え続けることができるのか? 野村氏はその点についても言及する。

「張本が凄いなと思うのは、いろんなことを何でも知っていることだ。どこで仕入れてくるのか、いつも感心する。噂話から何から何まで彼に聞けば何でもわかるぐらいの事情通だ。そう考えると、何でも取り上げるあの番組にはうってつけなのかもしれない」


「喝!」よりも大事な野球選手の「縁」


 張本氏もバッサリの『セ界恐慌』。一時期、健康問題も不安視された野村氏だが、完全復活、といってもいい切れ味を見せている。

 野村本といえば、「使い回しが多い」「またこの話題か」といったことが一時期、ネットを中心に話題になった。ただこの本では2015年の球界事情や来季展望についても語っているのが特徴だ。

○天が二物を与えた山田哲人
○ムードを壊す村田修一のバッティング
○前田健太はメジャーリーグでも通用する
○理想的な秋山将吾の構え方
○楽天は梨田昌孝監督に代わり少しはマシになる etc.

 清宮幸太郎やオコエ瑠偉など、野村本としては珍しく、高校球界についての話題も取り上げている。シーズンオフで野球の話題に飢えている人にとってはオススメの本といえる。

 この本のなかで、野村氏が何度も言説するのが、野球人における「縁」の大切さだ。野村氏自身が現役引退後、特に感銘を受けたとして挙げた陽明学者・安岡正篤氏の本の、こんな一節を紹介している。

「人生は縁から始まる。その縁を大切に生きろ。いい人、いい教え、いい書物に縁をもつこと。これが人生だ」

 そして、今の若手選手に、そして読者に対して、こんなメッセージを贈る。

「人生には自分で道を切り拓くか、人が歩いた道を行くか、2つしかない。人生はまさに縁。どういう上司に出会うか、素質を見抜いてくれる上司に巡り会うか。どういう女性に出会うか。だから、若いうちは積極的に行動しないといけない」

 2016年、積極的に行動して縁を掴み、勝利を手にするのは誰だろうか?


文=オグマナオト(おぐま・なおと)

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