1月15日、ロッテが締めの補強に打って出た。日本ハムを自由契約になっていたレアードを獲得したのは周知の通りだ。
ただ、これで煽りを食いそうなのは鈴木大地だ。昨季は全143試合に出場し、138試合で三塁を守った。これで3年連続全試合出場だが、2016年は遊撃、2017年は二塁、2018年は三塁がメインで毎年コンバートされている。
しかし、レアードの加入により、またもコンバートがウワサされている。鈴木大地のこれまでの働き、今後の展望をあらためて見つめてみたい。
2013年にレギュラーをつかんでから、6年連続で規定打席に到達。うち、5年が全試合出場で、2015年にわずか1試合を欠場したのみ。準皆勤賞のタフネスを誇っている。
その上、6年間の成績をシーズンごとに見ると、打率.263〜287、出塁率.330〜356、OPS.695〜748の間で推移しており、「計算できる選手」といえる。ポジションが代わっても、シーズンのトータルでは打撃で苦しむことはほとんどなかった。
守備に目を向けると、特に二塁、遊撃守備は守備範囲こそ物足りなさを指摘されることもあるが、安定感は誰もが認めるところ。遊撃で3度、二塁で1度、守備率トップに輝いており、2013年と2016年には遊撃手部門でベストナインに選出。2017年は二塁手部門でゴールデン・グラブ賞も受賞している。
ただ、「ポジション問題」に発展しているのは、昨季の三塁守備がやや不安定だったことだ。リーグワーストの10失策を喫し、現時点の三塁守備ではレアードに軍配が上がる。しかもレアードは守備でリズムを作るタイプで指名打者での出場を好んでいない。
さらにチームの構成も議論に拍車を掛ける。昨シーズン、二塁の中村奨吾はゴールデン・グラブ賞を獲得しており、遊撃ではルーキーの藤岡裕大が全試合出場。藤岡もやや守備には不安があるが、後半戦は安定感を増し、じわりと成長してきた。後ろには平沢大河も控えている。
また中村奨吾の遊撃守備はそこまでうまくはなく、二塁がベストポジションだ。
本音を探れば、打撃成績が物足りないのかもしれない。昨季は打率.266、8本塁打、49打点、出塁率.346、OPS.744。安定感はあるが、好打者の域を出ず、リーグ屈指の成績を残したことはない。
仮にキャリアハイをつなぎ合わせてみても、打率.287、11本塁打、61打点、出塁率.356、OPS.748。冷静に見ると「必要だが平凡」だ。これがメジャーだったら、ポジション詰まりのトレード放出もありそうだ。
しかし、一塁・井上晴哉、二塁・中村奨吾、遊撃・藤岡裕大、三塁・レアードの布陣でガチガチに固めるのがベストとは思えない。全員がフル出場を望まれるようなスターになればいいが、現時点ではそうではない。
さらに外野では角中勝也や荻野貴司が故障持ち。内外野のどこかで穴が出てくる。今後のチーム作りを考えると鈴木大地が外野や一塁を守れれば、心強いことこの上ない。
そうなるといよいよネットで囁かれている「鈴木大地=堀幸一」である。1988から2010年までロッテ一筋でプレーした堀幸一は内野全ポジションに外野も守った名ユーティリティープレーヤー。通算成績は打率.269、出塁率.336、OPS.749。あらためて見返すと、おお、なんとも鈴木大地っぽい成績である。
ユーティリティーではもったいないと思ってしまいそうだが、裏を返せば、鈴木大地も名ユーティリティーになれる器である。
打撃で殻を破ることも必要だが、鈴木大地ならコンバートに影響されずに進化できるのではないか。外野挑戦、一塁挑戦と両立できるのではないか。そんな「スーパーユーティリティー」の道も見える。
昨秋の契約更改で鈴木大地は、推定年俸1億1000万円から1億円へのダウンでサインした。
昨季の成績をもう一度おさらいしたい。打率.266、8本塁打、49打点、出塁率.346、OPS.744、得点圏打率.283。
打撃でもう一声という声はあるが、3年連続で全試合出場、さらにチーム事情による三塁コンバートを受け入れたことを考えると、ダウン提示はどういうことなのだろうか……。これはロッテに限らずだが、ユーティリティープレーヤーやコンバート組の評価があまりにも低い。
鈴木大地にはぜひ、その評価を突き破るスーパーユーティリティーになってほしい。三塁と指名打者での併用、そこに遊撃での出場が加わっても、なかなか壁は崩れない気がする。
及第点の評価が続く今、あえて外野挑戦するのも面白い。正ポジションがなくともリーグ屈指の強打者。そんな唯一無二のプレーヤーを目指せるのは、鈴木大地しかいない。
文=落合初春(おちあい・もとはる)