バレンティン(ヤクルト)のシーズン最多本塁打記録更新が大きな話題となっている今日この頃。何かすっかり置いてきぼりをくってしまったかのようになっているのがブランコ(DeNA)だ。春先は「今のペースなら70本行くのでは?」と注目を浴びていたのに、世間ってのは軽薄だよねぇ。
バレンティンの偉業にケチをつける気はサラサラない。だが、ここまで手のひら返したような騒ぎ方をされると、「オレは同じ方向には行かねーぜ!」と、つい反対方向を向いてしまう天邪鬼ゆえ、今だからこブランコを猛烈プッシュしたい。「今見ておかないと後悔する」スゴイところとは何か!?
ブランコの魅力は、その豪快なスイングと打球の飛距離であることは、誰が見ても一目瞭然だろう。加藤コミッショナーに絡んだ「飛ぶボール」の恩恵を受けているとはいえ、ほとんどのホームランが外野スタンドの上段に突き刺さる。インチキめいた打球などまったくない。もはや、場外に消える打球にもあまり驚かなくなってしまったほどの純然たる豪快弾である。
この打球がいったいどのくらいのものなのか? 『炎のストップウオッチャー』として野球のプレーをストップウオッチで測定した結果を原稿に書いている以上、やらねばなるまい! ということで、即興でやや精度は甘いが、今シーズン、ブランコが打った35本のホームラン(9月1日現在)のうち、全部とはいかなかったが、30本について、打ってからスタンドに到達するまでの滞空時間測った。
滞空時間が長いか短いか? 観客がよりホームランを堪能できるという意味で、一般的にプロのスラッガーは時間が長い方が「アーティスト」として賞賛される。ブランコの測定結果の内訳は以下のとおりだった。
3秒台=2本、4秒台=8本、5秒台=10本、6秒台=9本、7秒台=1本
ちょっと待て。この本数の内訳をグラフにしたらどうだろう? ちょうど真ん中の5秒台を頂点に、左右がほぼ同じ形となるきれいな山を描くことになりそうだ。こういう状態を確率用語で「正規分布」といい、偏差値などを求める際のモデルとして登場するが、「実際にはこんなきれいな分布になんかならねーよ」と揶揄される形である。カオス社会などと称されることもある時代の中で、今どきなんとキチッとしたナイスガイなんだ! アレ? 何か全然関係のないところで勝手に感動してしまった。
そういえば、ブランコのホームランシーンを立て続けに30回も見ていて、もうひとつ気づいたことがある。彼がホームランを打ったときというのは、その上半身は弓のように反り返る独特のポーズとなるのだが、そのとき、バットがちょうど振りきったところで左手から離れ、右打者のバッターボックスからやや後ろのあたりに「ポト」っと落ちるのだ。なんと、そのバットの落ちる位置と向きはほぼ毎回同じ!