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涙涙の“9回2死あるある”[最終回]

 書籍『野球部あるある』(白夜書房)で「野球部本」の地平を切り拓いた菊地選手とクロマツテツロウが、夏ならではの「高校野球あるある」新作を披露します。今回は「最終回」にふさわしく、“9回2死あるある”に絞ってお届けします!


【高校野球あるある File.13】
思い出作りとおぼしき3年生の代打起用。


敗色濃厚になったチームによく見られるのが、3年間がんばってきた部員への、監督からのご褒美的な代打起用。なんとなく、球場に卒業式のようなムードが流れる。高校野球ファンであれば「最後に3年生の意地を見せてくれ」と応援すべし。間違っても「もう諦めたの?」なんて、紳士淑女は口にしてはいけません。

【高校野球あるある File.14】
すでに泣き始めている選手が叱られる。

あと一人で俺たちの夏が終わる…。その寂寥感に耐えられなくなったのか、もしくは試合中の自分の重大なミスを悔やんでいるのか、ベンチの中でフライングして泣き始める部員がいる。そんな部員に対して「まだ終わってねぇよ!」と怒鳴るチームメイトがいるのだが、その声もまた涙声…なんてことも。

【高校野球あるある File.15】
「まだ終わってないぞ!」という言葉が口から出てくる時点で、半分くらい終わってると思う。

前述の通り、9回2死になると「まだ終わってないぞ!」と叫ぶ部員は多い。しかし、意地悪な見方をすると「終わり」を意識しているからこそ出てくる言葉な訳で…。半分は泣いたり下を向いているチームメイトに、もう半分は自分自身に対して言い聞かせているのだろう。そして終わりを受け入れるにあたって、言わずにはいられない言葉なのだ。

【高校野球あるある File.16】
内野ゴロを打ったら、ヘッドスライディングしないことには終われない。

恐らく夏の大会で統計を取ったら、かなりの確率でこの現象が起こっているはずだ。内野ゴロであえなく最後の打者となってしまった部員。完全にアウトになるとわかっていても、ヘッドスライディングしなければ「終わり」にできない。そしてしばらく一塁ベースにしがみつくように倒れ込み、一塁ベースコーチに抱えられて整列に向かうのが定番パターンだ。

【高校野球あるある File.17】
試合終了直後、スタンドから聞こえてくる「よくやった! 泣くな!」という声。

試合が終わった後、ベンチに入っている選手、指導者は応援スタンドに挨拶に向かうのが通例になっている。すでに泣いている選手がいるなかで、スタンドからはありがたい励ましの声が聞こえてくる。感極まり、礼をして頭を下げたまま泣き崩れる部員も続出する。使用頻度がかなり高い励ましワードは「胸を張れ!」。

【高校野球あるある File.18】
泣き崩れる部員の介護に追われ、泣けない選手がいる。

負けた直後、ベンチ付近では一人で立ち上がれなくなるほど泣き伏す部員が出てくる。しかし、無情にも次の試合を控えたチームに一刻も早くベンチを明け渡さなければならない。そんな事情を察して、大泣きするチームメイトを立ち上がらせ、無理やり球場の外へと連行する「介護士」が出現する。本当なら、自分だって泣きたいのに…。引退後、「あの時、お前のせいで泣けなかったんだよ!」という話は、チームメイトと居酒屋に集まった際の鉄板ネタと化す。


文=菊地選手(きくちせんしゅ)/1982年生まれ。編集者。2012年8月まで白夜書房に在籍し、『中学野球小僧』で強豪中学野球チームに一日体験入部したり、3イニング真剣勝負する企画を連載。書籍『野球部あるある』(白夜書房)の著者。現在はナックルボールスタジアム所属。twitterアカウント @kikuchiplayer

漫画=クロマツテツロウ/1979年生まれ。漫画家。高校時代は野球部に所属。『野球部あるある』では1、2ともに一コマ漫画を担当し、野球部員の生態を描き切った。『月刊少年チャンピオン』(秋田書店)で好評連載中の漫画『野球部に花束を〜Knockin' On YAKYUBU's Door〜』の単行本第1巻が8月8日に発売される。twitterアカウント @kuromatie

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