2013MLBが5分でわかる!「どこが、どうして強かった?」ランキング
松井秀喜(元ヤンキース)が去り、松坂大輔(メッツFA)も本格復帰にまでは至らなかった。今年海を渡りアスレチックス、ジャイアンツでそれぞれレギュラー獲りを狙った中島裕之、田中賢介も評価を得られない…。
ダルビッシュ有の今シーズン初登板であわや完全試合、という好投はありましたが、日本人選手を入り口にMLBに関心を向けていた方にはテンションの上げにくいシーズンインでした。しかし、終わってみれば上原浩治、田澤純一の所属するボストン・レッドソックスがワールドシリーズ制覇。久々にMLBの話題が日本のスポーツニュースを席巻しました。
11月は、そんな2013年のMLBをダイジェストで振り返るランキング企画を全4回でお届けします。第1回は強かったチームを紹介する「どこが、どうして強かった?」ランキングです。
セントルイス・カージナルス
――ナ・リーグ中地区1位 WS敗
昨シーズンは88勝を挙げてワイルドカードでプレーオフへ。今シーズンは9勝を上積みし97勝で地区優勝。ナ・リーグも制覇した。
数年間取り組んできた若手へのシフトをさらに押し進めたが、実力以上の成果を出したといえそう。特に若手投手の大胆起用が当たった。先発では23歳のミラー(15勝、防3.06)、22歳のワッカ(4勝、ポストシーズンでも4勝、防2.64)。リリーフでは23歳のローゼンタール(74登板、ポストシーズンでも10登板、防0.00)らが活躍。
打者は28歳の二塁手・カーペンターが打率.318。25歳の一塁手・アダムスも108試合、319打席の出場ながらチーム3位の17本塁打を記録。
タンパベイ・レイズ
――ア・リーグ東地区2位 地区シリーズ敗退
科学的分析に基づき、好成績の望める若手有望選手と長期契約を結んで年俸をセーブする施策などで知られる低予算&編成重視路線の代表格。
昨シーズン、バーランダー(タイガース)を抑えてサイヤング賞投手に輝いた左腕プライスらを中心とした先発投手陣が期待されたが、むしろ予想以上の成績を残した打撃と高いレベルにある守備の支えが効いていた。計画性が売りの球団らしい総合力で勝利を重ね92勝、プレーオフに2年ぶりに進出した。
上積み要素としては、昨シーズン11勝し頭角を現した26歳の右腕・カッブが今シーズンも11勝。内容はさらに良くなり信頼度が高まったこと。野手では今季加入したロニーが打撃で一定の成績を残し、弱点だった一塁の穴を埋めた。
ボストン・レッドソックス
――ア・リーグ東地区1位 WS制覇
昨年の地区最下位から、ジャンプアップしてのワールドシリーズ制覇。編成的には昨シーズン後半よりチームの再構築に取りかかり、高額選手を放出もしくは契約見直しを行い、コストパフォーマンスがまずまず優れた選手を集めた。人気球団だけに「補強が手ぬるい」という指摘もあったが、結果として方向性は的確だった。
グラウンド上の出来事で成績にもっともつながったのはクローザーの固定。リリーフ陣への期待度は高かったが、複数人体制から上原が抜け出し守護神化。これが大きな強みになった。
打撃では二塁のペドロイア、指名打者のオルティスらチームの実力者と、中堅のエルズベリー、右翼を守った新加入のビクトリーノらの活躍が効いた。
ほかにも、投手陣の整備に成功し、94勝を挙げて21年ぶりのポストシーズン進出を果たしたピッツバーグ・パイレーツ(ナ・リーグ中地区2位)も印象的。トレード期限ぎりぎりで有力選手を獲得する積極的な動きは、低迷脱出への熱意を感じました。日本で言うなら、シーズン前に果敢にもジョーンズとマギーの獲得にいった楽天のような動きといえるでしょうか。
MLBの舞台にも臆することのない若手投手が多く登場した都合、資金力的に中堅からそれ以下クラスの球団でもうまく戦える状況が訪れています。ただロサンゼルス・ドジャース(ナ・リーグ西地区1位)のような破格の資金力を持った球団はしっかり地区優勝。こちらは言うならば巨人のようなチームですが、どちらかに振り切ってしまうことなく、異なるタイプのチームが競い合う状況はやっぱり面白いものです。
■プロフィール
協力=高多薪吾(たかだ・しんご)
文=秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)…1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1、2』(デルタ、水曜社)など。
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