『週刊野球太郎』4月の特集では、今季からNPBに復帰することになった選手たちにクローズアップする。このコーナーでは、黒田博樹(広島)、松坂大輔(ソフトバンク)の投球フォーム、中島裕之(オリックス)の打撃フォームを、タイツ先生(「自然身体構造研究所」所長・吉澤雅之氏)のモノマネ動画を交えて徹底解剖。メジャー経験を経て、どのようにフォームは変化したのか、第1回目は黒田博樹投手に迫ってみた。
日本在籍時の黒田投手の投球フォームは、両脇をシーソーのように使い、腕を上から下に投げ下ろすことで発生する“遠心力”を、最大限に利用する投げ方でした。例えば、野茂英雄(元近鉄ほか)や岩瀬仁紀(中日)といった、アーム式に近い投球フォーム。腕の長さを利用して、テイクバック時に下にあった腕を、上から叩きつける投法で、“剛速球”を投げ下ろすタイプの投手でした。
ところが、今季から広島に復帰した黒田投手は、投げ下ろすというよりも、テイクバックをコンパクトにした印象があります。おそらくメジャーの強打者たちと対戦するうちに、制球力を重視する必要性を感じたのでしょう。“剛速球”を投げ込むスタイルでは、どうしても制球力はアバウトになり、タフなメジャーの世界では“剛速球”だけでは通用しないケースもあります。
また、キレイなストレートよりも「ボールを動かす」ことを基本とするメジャーの舞台を体感することで、より制球力の重要性に気付き、タフなメジャーの世界で先発投手として長いイニングを投げるにはどうしたよいか……ということを考えて、現在のフォームに変化したのだと思います。
日本に在籍していた2007年までの投球フォームと比べると、現在の黒田投手は、打者寄りの左足を大きくクロスステップして投げています。これは恐らく、本人は意識していないかもしれません。
もうひとつ、黒田投手の大きな変化といえるのが、「打者を観察しながら」リリースの際に、微妙に変化をつけている点でしょう。リリース時に垂直に手首を立てて、扇形に左右に微妙なひねりを加えることで、さらに打者を困惑させる球種を身に着けています。
たとえば、右打者にスプリット系のボールを投げる場合でも、黒田投手自身が「(打者の)開きが早い」と感じた際は、リリース直前に微妙に外に逃げる変化を加える……といったことも可能。真ん中付近にストライクを投じる際も、打者のスタイルを観察してリリース直前で微妙にボールを変化させることで、打者は「(投球を)とらえた!」と思っても、なぜか凡打になってしまう。動くボールと相乗効果を生み出すこの微妙な投球術は、これも黒田投手が何人ものメジャーの強打者と対戦したことで得た技術であり、体得した投球術でしょう。初めて対戦する日本の打者は、それは面食らうでしょうね。
以上、黒田投手のNPB復帰後の3つの変化の解説をアタマに入れながら、タイツ先生が演じるモノマネ動画を見てほしい。打者の目線から、それぞれ15球とも打者の手元で微妙に変化していることを感じていただけるだろう。